「水曜日のカンパネラ」とは小粋な名前です。公式サイトによれば、その語源は、「水曜日に打ち合わせが多かったから・・・と言う理由と、それ以外にも、様々な説がある」と紹介されています。そうは言っても、カンパネラは「銀河鉄道の夜」でしょうけど。

 そして、この名前は、「当初グループを予定して名付けられていたが、現在ステージとしてはコムアイのみが担当」とされています。タモリ倶楽部では水曜日のカンパネラのコムアイと紹介されいましたが、水曜日のカンパネラ=コムアイと考えてよさそうです。

 デビューは2012年にデモ音源をユーチューブに配信した時点に遡ります。その後、テレビCMやらJR東日本の広告やら、何かと話題となっていましたけれども、何とこの作品がアルバムとしてはメジャー・デビューとなります。

 かなり挑戦的なパッケージです。一枚のポスターがEPサイズに12折されているのみです。表面だけだと分かりませんけれども、コムアイが咥えているのは足の指です。自分の足なのかそれとも他の人の足なのか分かりませんが、ペディキュアをした綺麗な足です。

 さらに裏面には各楽曲の歌詞が印刷されているのですが、これが読みにくいことこの上ない。読まれることを意識したというよりも、ビジュアル優先であることは間違いありません。なかなか凄いデザインです。

 水曜日のカンパネラを支えるのは、作曲・プロデュースのケンモチヒデフミとサウンド担当のDIR.Fの二人です。もともと彼らがコムアイを引っ張り込んだそうですから、マキタスポーツ命名による「エロくない壇蜜」コムアイとよほど世界観が一致したのでしょう。

 彼らの特徴は楽曲名を見れば一目瞭然です。全10曲の中で、猫カフェを歌った「オニャンコポン」を除けば、すべて有名人の名前をタイトルに、その人のことを歌っています。しかし、「本能寺の変」のような歴史学習ソングではありません。

 登場人物と気安い友達になったかのように、彼らを素材に独特の世界が展開しています。選ばれた人物も古くは日本神話から「アマノウズメ」、千夜一夜物語から「アラジン」、世界史からは「チンギス・ハン」、日本史からは「世阿弥」に「一休さん」、「坂本龍馬」。

 ハワイの「カメハメハ大王」に、ハリウッドから「チャップリン」に「オードリー」・ヘップバーン。決して無理しているわけでもないし、失礼なわけでもない。この線をセンス良くまとめるのは並大抵のことではありません。ケンモチヒデフミの力量はなかなかです。

 サウンドはエレクトロニカと言えばいいのでしょうか、コンピューターによるサウンドです。こちらは挑戦的というよりも、極めてまっとうなポップ路線です。アイドルのトラックによくある形ですが、そこに少し大人で大貫妙子が好きなコムアイがうまくはまっています。

 中毒性が高いと言われる水曜日のカンパネラ、少しオタクも入った独特の世界観は若い世代の自由さを遺憾なく発揮していて気持ちがいいです。コムアイのボーカルはとにかく耳に優しいのがいいです。♪のうのうとしてる世阿弥、ひょうひょうとしてる観阿弥♪、素敵です。

Superman _ Wednesday Campanella (2017 ワーナー)