何と33年ぶりのファンカデリックです。33年という長い期間にためにためた思いを爆発させるかのように、3枚組全33曲という巨大なボリュームで発表されました。全部聴くと3時間20分を超える長丁場になります。物凄い創作意欲です。

 それにしてもなぜファンカデリックの名義で出したんでしょう。Pファンク・オールスターズでもよかったでしょうし、ソロ名義でもよく、さらにはパーラメントでもよかったはず。そこにジョージ・クリントンのファンカデリックへの思いを感じます。

 33年間を実感させるのは、ジョージのお孫さんたちやゲイリー・シャイダーのお子さんギャレット・シャイダーの参加です。みんなもう子供ではありません。立派にラップを披露し、ギターをバリバリ弾いています。

 ブーツィー・コリンズやバーニー・ウォーレルなどの懐かしい顔ぶれも参加していますし、新進気鋭のミュージシャンも参加していて、ファンカデリックならではの懐の深さを感じます。ジョージは長いキャリアを全く無駄にしていません。

 新作ばかりではありますが、昔の音源も多く使っています。というのも、すでに鬼籍に入ったかつての仲間、エディー・ヘイゼルやタイロン・ランプキン、ゲイリー・シャイダーなどのクレジットもあるんです。エディーに至っては1992年没です。

 しかし、昔懐かしい感じは一切しません。見事に新しい音に生まれ変わっています。決して懐メロに堕さないジョージの意気込みを感じます。これまた懐かしいスライ・ストーンの参加曲が5曲もありますが、これもスライ節ながら現在進行形になっています。

 今回の共同プロデュースはスライの他に、Gクープことロブ・マンデルやソウル・クラップ、いずれも若手のアーティストです。ことほどさように新旧のアーティストがごちゃ混ぜになっていて、その姿勢そのものがPファンクです。

 よく比較されるフランク・ザッパほどには音楽的なコントロールが強くないジョージですから、若手のやりたい放題を単に面白がってアルバムに仕上げていくのでしょう。そのためアルバムの曲調などはとても幅が広いです。

 ブラックバードやゲイリー・シャイダー、マイケル・ハンプトンのギターが活躍していたり、スライが出てきたりすると昔のファンカデリックとの地続きを感じます。一方、馴染みのミュージシャンはおろかジョージさえも見当たらない曲などはまるで過去とは関係ないようです。

 お孫さんの音楽をプロデュースしてまるで違和感がないというのは凄いことです。ファンクの魂は永遠であることがよく分かります。Pファンクは様式ではなくてファンクの精神そのものだったということでしょう。「幻想こそ真実」?「人はアホでスケベで甘ったれである」?

 その意味ではこれはファンカデリックの作品なのだと観念することができます。時々の参加ミュージシャンによって音楽性が大きく変わったファンカデリックでしたが、ここでは一つのアルバムの中で千変万化。なおこんな作品を作るとはさすがはジョージ・クリントンです。

First Ya Gotta Shake The Gate / Funkadelic (2014 The C Kunspyruhzy)