「ブーツィーは何をしてるんだ」というタイトルは6年ぶりのソロ・アルバムにふさわしいです。ファンク界一の働き者だったブーツィーのアルバムが6年も出なかったわけですからファンの多くはこう思っていたはずです。

 何でもブーツィーは1984年にバイク事故にあって腕を骨折したそうで、ボルトを埋め込む手術を受けました。一時は腕が元通り動くかどうか危ぶまれたほどでしたが、何とかリハビリを続けて無事にベースが弾けるようになったとのことです。

 こういうことがあるとデトックスができるのでしょうか、ドラッグとも完全におさらばし、むしろ健康になりました。私も病気をきっかけにお酒をほとんど飲まなくなりました。人生やり直し、第二章の始まりと言ってよいでしょう。

 この頃、ヒップホップ勢の活躍によって、サンプリングのネタとしてPファンクは再び盛り上がりを見せていました。日本でも本格的にPファンクが注目を浴びており、ブーツィーのこのアルバムも豪華仕様で日本盤が発売されています。

 あまりに豪華だったので、私は安い輸入盤を買いました。ちょうどPファンクが恋しくなった時期だったんです。70年代のPファンクに比べると、随分とエレクトロな80年代仕様になっていて、これはこれでとてもカッコいいと思ったものです。

 ブーツィーも復活第一弾ということで気合が入っており、どの曲もフックが効いていて、耳にのこります。1曲目からして、ブーツィーがプロデュースしたゴッドママのラップで始まります。♪ブージラ・イズ・バック♪と高らかに復活宣言です。

 続く「サブリミナル・セダクション」ではオリエンタルなメロディーが耳を惹きます。そして、スペース・ベースの「リーキン」に続く「ショック・イット・トゥー・ミー」は、ニューヨークの番長ビル・ラズウェルとの共作、共同プロデュースによる作品です。

 前年にビル・ラズウェルと坂本教授との共作「ネオ・ジオ」が発表されており、ここにブーツィーがベースで参加していますから、その縁もあったのでしょう。ビルはもともとPファンクに影響を受けた人ですから、リスペクト故の共演です。

 B面に移っても「ラヴソング」や「キッシン・ユー」を始め、キャッチーな名曲が続きます。いずれもエレクトロなサウンドなので、随分すっきりと響きます。もともとソロ作はネバネバ感が少し薄かったですが、ここではそれがさらに進んで80年代仕様になっています。

 メイシオ・パーカー、フレッド・ウェスリー、バーニー・ウォーレルやゲーリー・マッドボーン・クーパーなどの懐かしいPファンク軍団や、新興のマイコ・ウェイヴなど参加ミュージシャンも生き生きとした嬉しそうな演奏を繰り広げています。やはり復活作はいいもんです。

 ブーツィーはますますあちこちのレコーディングに引っ張りだこになってきており、この翌年には大沢誉志幸のアルバムに参加します。ベース界随一の人気者は、Pファンクのレガシーを広く深く浸透させるに至ります。その充実ぶりを予兆する万人受けする快作です。

参照:「P-FUNK」河内依子

What's Bootsy Doing? / Bootsy Collins (1988 Columbia)