いつもはペドロ・ベル画伯の怪しいイラストを起用しているファンカデリックにしては、珍しいジャケットです。椅子に座ってこちらをみているのは、Pファンクの総裁ジョージ・クリントンです。公民権運動の指導者ブラック・パンサー党のヒューイ・ニュートンを模した格好です。

 アンクル・ジャムは米国の象徴アンクル・サムのもじりであることは明らかです。軍隊シリーズ第二弾ということで、そのアンクル・ジャムがファンクを守るための兵隊さんを募集しています。まさに「アンクル・ジャム・ウォンツ・ユー」です。

 ペドロ・ベル画伯の絵はジャケットの裏側と内側に描かれていて健在ぶりを示していますから、クリントン御大はよほどこのジャケットを撮りたかったんだということが分かります。グループ内政治に明け暮れたおかげで、政治の世界に近づいてきました。

 この作品はファンカデリックとしては1年ぶり、後にデ・ラ・ソウルを始め、LLクールJ、エバーラスト、ブラック・アイド・ピーズ、ボビー・ブラウン、トゥーパックなどの大物アーティストにサンプルされまくって有名になった「ニー・ディープ」が収録されたアルバムです。

 「ニー・ディープ」はR&Bチャートの首位に輝き、ファンク界のクラシックとして知られる、16分近くに及ぶ名曲です。作曲はクレジットが分かりにくいのですが、ジューニーことウォルター・モリソンとジョージ・クリントンです。

 河内さんの解説も若干混乱しています。演奏もほとんどジューニーなのか、それとも他のPファンクの面々も参加しているのか良く分かりません。ボーカルにフィリー・ソウルのグループ、スピナーズのメンバーだったフィリッペ・ウィンが参加していることは確かです。

 この曲は一見平坦でとらえどころのない曲です。ところがそこにずぶずぶとはまっていくんです。これも後のクラブ・ミュージックやヒップホップと親和性が高い。70年代ファンクの粘っこい猥雑さではなく、とてもクールな響きが素晴らしい。ゆがんだギター・ソロもいいです。

 もう一曲大作「アンクル・ジャム」があって、残り4曲は比較的小品で飾る、初期の名作「マゴット・ブレイン」を思わせる構成です。「アンクル・ジャム」はブーツィー・コリンズのゴリゴリくるベースの独壇場で、もはやベースがリード楽器のように前面に出てきています。

 この2曲があるおかげで、ドラムとギターのロックっぽいジャム・セッションを録音してみましたという風情の曲や、ジョージがバーニー・ウォーレルのピアノをバックにフランク・シナトラのような歌を響かせる曲、そして軍隊につきものの行進曲などの位置づけが明確です。

 大作「ニー・ディープ」をものしたジューニーは他の曲にはほとんど参加していない模様です。その点で、以前のファンカデリックらしいサウンドになっていると言えます。バーニーのキーボードがまとめ役になっているのでしょう。

 「ニー・ディープ」を擁するアルバムとして人気も高く、R&Bチャートで2位、ゴールド・ディスクに輝いています。かなりしゅっとしてきたファンカデリックですが、その方向はその方向できちんと結果を残すところがやはり凄いです。

参照:「P-FUNK」河内依子

Uncle Jam Wants You / Funkadelic (1979 Warner)