1979年、フェラ・クティのライブの前座を務めるために、ロイ・エアーズがバンドを引き連れてアメリカからやってきました。よほど意気投合したのでしょう、二人は一緒にアルバムを作ることを決めました。その結果がこの作品です。

 フェラよりも2歳年下のロイ・エアーズはこの頃にはすでに芸歴も長く、そのジャズとファンクを融合した独自の音楽スタイルで大きな地位を築いていました。そんな彼がフェラの前座を務めるというのですから、よほどフェラを敬愛していたのでしょう。

 このアルバムには15分を超える曲が2曲だけ収録されています。これはいつもの通りです。しかし、このアルバムは二人の名前がクレジットされたアルバムだけあって、ロイとフェラが一曲ずつ分け合っています。こんなことはフェラ史上初めてです。

 ロイ・エアーズがリードをとっているのは「2000ブラックス・ガット・トゥ・ビー・フリー」です。この頃、ロイはジャズというよりもR&Bのスターとしてディスコ寄りのサウンドを展開していました。この曲はまさにそのディスコ・ビートが鳴り響きます。

 バンドは14人のミュージシャンと12人のコーラスからなるフェラのオーケストラとエアーズの7人組からなる大所帯です。ボーカルはエアーズですし、リズムはディスコ・ビートですから、さほど強くフェラの匂いはしません。

 てっきりフェラはサックスを吹いているものと思いましたが、どうやらこれはエアーズのバンドのハロルド・ランドのようです。一緒に吹いているのかもしれませんが。ただし、コーラス隊は大活躍しています。繰り返される♪2000ブラックス♪のフレーズは最高です。

 ビートはディスコであっても、延々と繰り返されて、次第にアフロ・ビートと融合していくように感じるまでにこちらの感覚が麻痺してくるのは本当に気持ちが良いです。フェラのカタログの中でも異色中の異色ですが、このグルーヴは独特で素晴らしい。

 フェラがリードをとる曲は「アフリカ・センター・オブ・ザ・ワールド」です。こちらはいつものアフロ・ビートですから、聴いていてほっとします。エアーズのバンドからは、エアーズ本人とサックスのハロルドだけが参加している模様です。

 ゲストを立てるフェラらしく、エアーズのヴィブラフォンが大活躍しています。これがとても新鮮です。テナー・ギターのヒプノティックな響きを背景に一音一音がファンキーなヴィブラフォンの音色が舞う。こんなフェラは聴いた事がない。

 両曲の歌詞はともにアフリカの未来を明るく描いています。21世紀にはアフリカは植民地レガシーから解放され、世界の中心に位置していく。21世紀もかなり経過しました。しかし、そのような世界はまだ到来していません。これからに期待しましょう。

 フェラはジンジャー・ベイカーなどとも連名でアルバムを作っていますが、ここまで相手の土俵にのったアルバムは珍しい。他にもさまざまなアーティストと共演して欲しかったなあと思わせる、充実したアルバムです。

Music Of Many Colours / Fela Anikulapo Kuti & Afrika 70 / Roy Ayers (1980 Phonodisc)