ファンカデリックのアルバムとしては初めてR&Bチャートのトップに輝きました。それまでのファンカデリックの作品とは異質な感じのするサウンドですけれども、この頃のPファンクは絶頂を迎えており、そんなことには頓着なく、見事にヒットしました。

 しかし、その異質感は「その後のファンクの潮流を変えることにもなった」と評されるほどに重要なグルーヴを生み出したわけですから凄い。さまざまなミュージシャンが出たり入ったりするPファンクのプラットフォーム的な性格のなせる業です。

 本作の鍵を握っているのは、新たにPファンクにやってきたウォルター「ジューニー」モリソンです。ジューニーはファンクの重鎮、エロ・ジャケで有名なオハイオ・プレイヤーズの出身で、彼らの出世作「ファンキー・ウォーム」のシンセ・リフを生み出した人です。

 ジューニーはアース・ツアーの頃にはPファンクに参加しましたけれども、けがの影響でツアーには参加せず、スタジオに居残ってしこしこ作業していた模様です。その成果がこのアルバムということで、Pファンク・システムの底力を感じます。

 そのジューニーが縦横無尽に活躍するタイトル曲がまず凄いです。パーラメントの世界観とは一味違い、より現実に根差したファンカデリックの世界観ですが、今回は「ワン・ネイション・アンダー・ア・グルーヴ」、すなわち「グルーヴのもとに世界は一つ」と大きく出ました。

 「我らにファンクを!さもなくば死を!」、「ファンクが君に何をしてくれるかを問うのではなく、君がファンクに何をできるのかを問え」と、さまざまな名言がファンクに置き換えて連打されると、だんだん世界平和のための唯一の手段がファンクだという気にもなろうというものです。

 さらに、ジャケットの絵は、有名な第二次世界大戦の時の硫黄島奪取時の写真を模したものです。さらにファンカデリックのロゴの下地には明らかに日本地図をデフォルメした絵柄が使われています。グルーヴのもとに世界を一つにしようとする意気込みが伝わってきます。

 ただし、アルバム・タイトルにもなったこの曲は決して暑苦しくはありません。とてもクールです。河内依子さん曰く「マイナー調のわさわさファンク」は後のクラブ・ミュージックにつながる響きがあります。ジューニーの持ち味が見事に花開いています。

 面白い曲としては、見事なロック・サウンドを展開する「俺たちゃロックもお手のもの」があげられます。これまでとは異質と書きましたが、ギター全開のファンカデリックらしさはこの曲などに健在です。パーラメントとは随分異なるファンク・ロックが炸裂します。

 その流れで言えば、本作に添付されていたEPからの「マゴット・ブレイン」のライヴ録音が凄いです。今回はマイケル・ハンプトンの流れるようなギターが炸裂しています。このうねうねとしたのたうち回るギターを聴いていると至福の時間が訪れます。

 ファンカデリックの作品の中では最も売れたアルバムですし、サウンド面はもとより、その明快な主張もPファンクを代表するもので、ファンカデリックの作品群の中で、どれか一枚と言われればまずこの作品があがるでしょう。大傑作にして、ファンクの真髄を極めた作品です。

参照:「P-FUNK」河内依子

One Nation Under A Groove / Funkadelic (1978 Warner)