ブーツィー・コリンズの眼鏡は一体どんなかけ心地なんだろうと不思議に思っていましたけれども、このアルバムのジャケットにあるような眼鏡なら問題なさそうです。スマホを飾る女性ならば意外と簡単にできてしまいそうな眼鏡です。

 この眼鏡の仕様はぶっ飛んだ感じではなく意外に正統派です。ブーツィー・コリンズのラバー・バンドは、その点でもパーラメントやファンカデリックとは一線を画していることが分かります。彼らから繰り出されるファンクもPの字が薄い。

 邦題は「ファンキー・オブ・ジ・イヤー」、原題の「プレイヤー・オブ・ジ・イヤー」は、今年のポン引き王みたいな意味だそうですから、当たらずとも遠からず、何となく意訳としては当たっていないにしても雰囲気を伝えていて、なかなか工夫されています。

 ブーツィーズ・ラバー・バンドも順調に三枚目を数えました。またまた米国のR&Bチャートでは首位を獲得しましたし、シングルとしても「ブージラ」が1位になりました。Pファンクとしてはブーツィーがパーラメントに提供した「フラッシュライト」に次ぐ快挙です。

 今作はファンク・サイドとスロー・サイドを分けることはせずに、両者が混在する形です。それだけこのバンドのアルバム制作もこなれてきたということでしょう。バンド間の線引きが明確になってきたことの一つの表れだといえます。

 シングル・ヒットした「ブージラ」は、日本が誇る怪獣ゴジラとブーツィーを掛け合わせた言葉をタイトルにしました。♪ヤ・バ・ダ・バ・ドゥー♪というブーツィーの十八番となる掛け声が決まっている素敵なファンクです。

 地味ながら注目は「ロト・ルーター」という曲です。ロト・ルーターとは水回りのトラブルに24時間体制でお答えする米国の会社のことだそうで、日本で言えばお世話になっているクラシアンです。曲の最後にはトイレのフラッシュ音を入れるなど周到な曲作りです。

 他にも「メイ・ザ・フォース・ビー・ウィズ・ユー」は「スター・ウォーズ」の有名な挨拶を曲名に持ってきました。ブーツィーの音楽はこうしたタイトルから分かる通り、アメコミ調で親しみやすい。パーラメントやファンカデリックの壮大な物語とは一線を画しています。

 サウンド面でも、子どものコーラスを入れたり、途中で童謡的な可愛らしいメロディーを挿入したりして、単純なフレーズの繰り返しに変化をつけています。音楽的に複雑なラインを追及することを控え、エンターテインメントを心掛けています。

 その分、若干引いたところから俯瞰しているようにも思えますから、最初の頃のイケイケ感から少し落ち着いたのでしょう。ブーツィーのような才人が落ち着いてくればどんなことになるか、その一つの見本がこの作品です。

 R&Bチャートで首位となるだけのことはあります。折り目正しいファンクとこれも正統派なバラードがきっちりと収まっています。そうなるとタイトルは文字通りの意味にとっても良いのかもしれません。ホーニー・ホーンズも大活躍していることですし。

Bootsy? Player Of The Year / Bootsy's Rubber Band (1978 Warner)