若い頃、パーラメントのこのアルバムをカット盤で手に入れて聴いていました。廉価でLPレコードを販売するために、ジャケットの一部をカットしたものです。Pファンクはアメリカでこそ人気者でしたが、日本ではまだまだマニア向けでした。

 カット盤だからといって駄作であるわけではなく、このアルバムなどパーラメントの絶頂期を飾る名盤だと言って差し支えありません。とうとうオリジナル・パーラメンツの4人のボーカリストのうち3人がクレジットから消えてしまったのに絶頂期。複雑な気分です。

 ドクター・ファンケンシュタインが宇宙に帰還する際、ファンクが全く欠如した惑星を発見します。その惑星は悪名高いサー・ノーズによって銀河中に広められたプラシーボ症候群の餌食になっていたのでした。

 そこでドクターは彼の最高の発明バップ・ガンで武装したスターチャイルドを送り込みました。と、こんな物語がスター・ウォーズの冒頭に出てくる説明シーンと同じ形でブックレットに刻まれました。そして二人の対決はアメコミ風にブックレットに描かれています。

 西部劇よろしく二人は背中合わせに歩きだし、カウント10で撃ち合う勝負でしたが、さすがはワン理論のPファンクです。カウント・ワンでスターチャイルドがバップ・ガンをぶちかまし、めでたくサー・ノーズは踊りだしました。

 お話のアイデアはもちろんジョージ・クリントン発ですけれども、作画は以降パーラメントを担当するオヴァートン・ロイド。彼のデビュー作です。ステージでもこの物語は再現されています。これだけ多作になるとこうした物語を軸にした方が曲も舞台も作りやすいのでしょう。

 アルバムからシングル・カットされた「フラッシュ・ライト」はシングルとしてPファンク史上初のR&Bチャート首位を飾りました。元はブーツィーの曲らしいですけれども、パーラメント向きだとして気前よく差し出したのだそうです。パーラメントの代表曲です。

 ブーツィーは作曲のクレジットはあるものの、演奏しているとはジャケットに記載がありません。ばりばり演奏しているのですけれども、Pファンクの困ったところは、こうしてきちんと記載がないことです。耳だけで聞き分ける楽しみがあると言えばあるのですが。

 物語と関係ないのは「フラッシュ・ライト」と証券マンの歌のみで、「バップ・ガン」「サー・ノーズ・ドボイドブファンク」「ファンケンテレキー」「プラシーボ・シンドローム」と物語関連の曲が6曲中4曲も含まれています。

 曲調はもちろん違いますが、歌詞の世界同様にサウンドもにも一貫性があります。パーラメント作品はジョージの言う通り、構成までしっかり考えられています。その結果、アルバム単位で聴くしか選択肢はありませんが、40分間の幸せが約束されます。

 バーニー・ウォーレルのシンセもマイケル・ハンプトンのギターもブーツィーのベースもすべてが溶け合っていて、ファンクの塊が迫って来るようです。若い頃はなかなかその魅力が分からなかったPファンクですが、いつの頃からか壺にはまって抜けなくなりました。

Funkentelechy vs. The Placebo Syndrome / Parliament (1977 Casablanca)