アルバム・タイトルは「無条件保証」です。後にビーフハート自身が本作品を毛嫌いすることになり、「今すぐレコード店に返品して返金してもらえ」と宣言してしまいました。アルバム・タイトルを文字通り読めば実際に返金してもらえそうです。レコード会社も慌てたことでしょう。

 本作品は前作のポップ路線をさらに推し進めており、キャプテン・ビーフハートのコアなファンからは蛇蝎のごとく嫌われることになりました。「トラウト・マスク・レプリカ」の頃のサウンドとはかけ離れており、見事に普通の曲ばかりです。

 普通というと語弊があるかもしれません。普通の意味で音楽的、ビザールではないという意味での普通、そんな意味です。決して楽曲の質が低いとかそういうことではありません。普通のロックないしブルースのフォーマットにのっとった曲ばかりという意味です。

 マジック・バンドの面々はさほど前作とは変わりません。ズート・ホーン・ロロことビル・ハークルロードのギター、アート・トリップのドラム、ロケット・モートンことマーク・ボストンのベースを軸として、これまた普通に味のある演奏を繰り広げています。

 しかし、マジック・バンドはこの作品の完成後、一斉に辞めてしまいました。これ以上、ビーフハートにサンドバッグのように扱われるのは我慢ならないという理由です。ビーフハートがバンドから首になったと言ってよいかもしれません。

 そんな後日談がありますから、ビーフハートもバンド・メンバーもこの作品のことを高く評価できないのでしょう。結構、みんなでぼろくそにけなしています。一応、作品の形にして出したんだから、そこまで言うことはないでしょうに。

 プロデュースはアンディ・ディマルティーノ、名曲「悲しき雨音」のプロデュースに係わった人です。彼は作曲の名義にも加わっていますが、キャプテンはちゃっかりと奥さんのジャンも名義に入れ込んでおり、分け前はアンディが3分の1になるようにしています。

 ともあれ、テッド・テンプルマンよりもオーソドックスなプロダクションになっており、ビーフハートの声もだみ声というよりも、綺麗とも評することのできる渋い歌声で録音されています。そして、ズート・ホーン・ロロのギターが泣かせます。

 流れるようなタッチのギター・サウンドでビーフハートの声との相性がとてもいいです。ギターを追いかけても楽しい。憂いを帯びた湿ったサウンドが哀愁を誘うんです。ギター中心ともいえるサウンドは初めてなのに、これでも脱退するとはよほど扱いがひどかったんでしょう。

 ファンには毛嫌いされていると申し上げましたが、実は隠れファンもたくさんいる模様です。ザ・キャプテン・ビーフハートというサウンドではありませんが、だからと言ってビーフハート以外の何物でもありません。その微妙な感覚がたまらない人にはたまらない。

 楽曲の質は高いですし、普通のロックなのに確実にビーフハートであるという矛盾とも言えない矛盾が心地好いアルバムです。しかし、残念ながらチャート・アクションはさっぱりで、全米チャートではかろうじてトップ200入りした程度です。世の中ままならないものです。

Unconditionally Guaranteed / Captain Beefheart & the Magic Band (1974 Mercury)