デビュー作同様、ほとんどがカバーからなるストーンズの英国での二作目です。これまたジャケットには何の文字もありません。アンドリュー・オールダムのこだわりはここでも貫かれました。さすがは辣腕マネージャーです。
 
 今回も全12曲中9曲がカバー曲です。キースは、「シカゴやロスアンゼルスでレコーディングするときは、地元のレコード店に行ってソウルやリズム&ブルースのレコードを大漁に買い漁ったものだ。」と語っています。
 
 そうして、「そいつをホテルの部屋に持ち帰って、片っぱしから聴いて、レコーディングで使える曲を探していたんだ」と続けます。レパートリーにしていた曲ではなくて、レコーディングするために曲を探していたというのは面白い話です。
 
 今作では、シカゴのチェス・スタジオでの録音が4曲、ハリウッドのRCAスタジオでの録音が3曲、お馴染みロンドンのリージェント・スタジオが5曲となっています。同じ英国録音でも、チェスを経て一皮むけた感じがします。
 
 さらにハリウッドのRCAスタジオでは、ストーンズにとって重要な役割を果たすジャック・ニッチェや、デイヴ・ハッシンジャーというスタジオ巧者と出会います。これもまたストーンズを飛躍させた出会いでした。
 
 オリジナル曲は3曲、「ワット・ア・シェイム」、「グロウン・アップ・ロング」、「オフ・ザ・フック」です。容易に気が付く通り、代表曲と言える曲はありません。そんなに悪い曲でもありませんが、さほどストーンズらしくない。
 
 それよりも、このアルバムでは断然「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」が光ります。リズム&ブルースの作曲家ジェリー・ラゴヴォイ作でトロンボーン奏者カイ・ウィンディングによってオリジナルは吹き込まれた曲ですが、これはほとんどストーンズのオリジナルと化しました。
 
 この曲はシングル・ヒットもしましたし、ライブの定番となり、ベスト盤の定連ともなりました。ミック・ジャガーの粘っこいボーカルが冴えわたる名曲です。ためのきいた演奏が素晴らしいです。間違いなくこのアルバムを象徴する曲です。
 
 米国盤「12X5」に収録されていたバージョンはロンドンで録音された方で、イアン・スチュワートのオルガンがイントロとなる通称オルガン・バージョン、こちらはチェス・スタジオで録音されたギターによるイントロ・ヴァージョンです。
 
 全体にデビュー作に比べるとプロっぽくなりました。米国での修行の効果がてきめんに表れれ、演奏にも余裕が感じられますし、何よりもスタジオに慣れてきた感じがします。この頃の成長度合いというのは凄いものです。
 
 R&Bやブルースのカバーが中心とはいえ、自分たちのサウンドが次第次第に明確になってきたように思います。米国で制作環境に恵まれたことが大きいのでしょう。次なる展開への予感がどんどん高まってくる気持ちの良いアルバムです。
 
参照:「ローリング・ストーンズを聴け」中山康樹
 
The Rolling Stones No,2 / The Rolling Stones (1965 Decca)