ボストンの2作目は前作から2年弱のインターバルを置いて発表されました。十分な時間だとも思いますが、スタジオの鬼トム・ショルツにとっては短すぎたようです。デビュー作の大成功のせいでレコード会社が待ちきれず、「僕の手から取り上げられてしまった」。

 実際、アルバムは全体で40分に満たない短さです。「あのアルバムにはもう一曲入れる予定だった」んです。「僕にとって、アルバムは完成していなかった」と述懐するショルツですが、今では「自分でもかなり楽しんでいる」と語っています。

 そんなこんなあったにしても、「公平な基準から判断しても、待った甲斐のあるアルバムとな」りました。英文ライナーはさらに「もし当時少しでも失望した人がいたとしたら、それは単純に、初めては二度ないということだ」と続きます。

 ローリング・ストーン誌ではケン・エマーソンが「これは、ボストンのまばゆく輝くデビュー・アルバムで紹介されたサウンドからの出発ではなく、集大成である」と書いています。どちらの意見も、結局、デビュー作と同工異曲であると主張したい様子です。

 それほどデビュー作でボストンが提示したサウンドが個性的であったということでしょう。それがボストンの持ち味ですから、二作目で踏襲したとしてとやかくいわれる筋合いはありません。むしろ、同じ路線で行ってくれて感謝すべきです。変化がすべてではありません。

 このアルバムは見事に前作を踏襲しているわけですが、前作がブラッド・デルプのボーカルを除けば、実質的にショルツのワンマン・レコーディングだったのに対し、この作品はバンドの面々も大いに係わっています。よりバンドらしいと言えば言えます。

 冒頭の「ドント・ルック・バック」はショルツのギター・リフが全てを持って行ってしまう素晴らしさです。もうこのアルバムのことが頭によぎると、まずはこのサウンドが鳴り響きます。♪振り返るな、新しい一日が始まる♪と、何の屈託もない主張も似合っています。

 つづくインストゥルメンタルの小品「ザ・ジャーニー」はトム・ショルツが「一番気に入っている小曲」で、そこから明るくポップなロック「イッツ・イージー」への橋渡しとなっています。前作でも同じような流れがありました。こういう構成が好きなんでしょう。

 A面最後の曲「ア・マン・アイル・ネンバー・ビー」は特に日本ではアルバム中最も高い人気を誇る曲です。まさかの長尺のバラードで、エマーソンがツェッペリンの「天国への階段」と比較しているほどの作品です。

 オフコースの小田和正はボストンのファンだそうで、代表曲「愛を止めないで」にはこの曲からの影響がくっきりと表れています。何とも湿り気のあるギターが日本人の琴線に触れまくりです。しみじみします。

 B面にはロック的な曲を並べており、見事にボストンらしく決めています。特有のギター・サウンドとハイ・トーン・ボイスでポップ全開のロックを奏でる様は、70年代アメリカの陽の部分を代表するサウンドです。時を超えつつも、懐かしさも持ち合わせるサウンドです。

Don't Look Back / Boston (1978 Epic)