普通はこういう白砂に囲まれた島の写真をジャケットにするならば、透き通るような真っ青な海が背景にあって良さそうなものです。しかし、このジャケットでは鈍い青、さらには無数の手のイメージが隠されています。ケチャかと思いました。

 さすがは人見知りで知られるマイク・オールドフィールド、一筋縄ではいきません。♪私たちは島。でもそんなに遠く離れてはいない♪という一節が本アルバムのテーマであろうと思います。その少しどんよりとした空気がジャケットに表れています。

 マイク・オールドフィールドの11枚目のアルバムはインストゥルメンタルの大作1曲とポップなボーカル曲6曲から構成されています。この構成は彼の得意とするところで、81年の「ファイブ・マイルズ・アウト」や83年の「ムーンライト・シャドー」にも使われていました。

 初期の3部作に慣れ親しんでいた身としては、大作の方は自然と耳に入ってきますけれども、ポップ・サイドがどうしても気になります。エクセジェシスの効果が発現したと思われるポップ面、これがどうしてどうしてなかなかいいんです。

 ボーカリストは豪華なゲスト陣が飾っています。タイトル曲「アイランズ」はなんとボニー・タイラーです。あのウェールズ生まれのどすこい姉さんが歌っているんです。ウェールズはケルトの雰囲気が濃厚ですから、そこにマイクとのつながりを見て取りましょう。

 そして、「フライング・スタート」には、恩人ともいえる盟友ケヴィン・エアーズが登場しています。この曲はケヴィンの「フォーリング・アップ」で再演されています。そのアルバムはケヴィンの復活作とも言われますから、マイクの恩返しは成功したと言えるのでしょう。

 残りの4曲中3曲はアニタ・ヘジャーランドという女性歌手が歌っています。彼女はこの当時のマイクのパートナーだったそうですから、身内を起用したわけです。なかなか魅力的なボーカルです。恋に目を曇らせたわけではありません。

 もう一曲「マジック・タッチ」は英米盤でボーカリストが違うという不思議なことになっています。日本盤はどうやら米盤同様マックス・ベイコンという人らしいですが、もともと英盤のジム・プライスとあまり区別がつかないそうです。

 インスト大作は「ウィンド・チャイム」と題されています。二つのパートに分かれていますが、もっと細かく分けることもできます。かなりポップな目まぐるしい展開になっており、初期三部作とはかなり異なっています。

 インスト大作も含めて、随分とポップでカラフルなサウンドです。ただし、決してコマーシャルな感じはしません。キャッチーでポップなメロディーなんですが、あまりヒットしそうにない。どこか超然とした佇まいがあるんです。

 やはりマイクは島なんです。そんなに遠くないけれども、確実に海で間は隔てられています。同じく人見知りの私にはとてもよく分かります。そこが共感できれば、素敵なサウンドに身も心も奪われること間違いありません。

Islands / Mike Oldfield (1987 Virgin)