ノラ・ジョーンズはデビュー作でグラミー賞8部門を独占する快挙を成し遂げました。そんな大変な盛り上がりの中で、意外とあっさり第二作目が発表されました。前作から2年たっていますが、グラミー賞からはさほど時は経っていません。

 「私のアルバムが『ポップとして』選ばれるなんて」と最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバム賞を受賞して語った通り、もともとジャズ畑の彼女はこうした成功に対しても自然体で臨んでいます。これがポップ畑出身で、当初からグラミー目的だったら違ったことでしょう。

 受賞後のインタビューで「世の中にはもっと重要なことがいろいろ起こっているし、私の受賞のことはみんなすぐ忘れるんじゃない?そうしてもらえたほうが嬉しいんだけど」と語る彼女です。決して賞で変なことになったりはしていません。

 しかし、当然ですが、デビュー作に比べると、随分と落ち着いたアルバムです。前作同様、ツアーを一緒に回っているバンドと作り上げた作品には違いありませんが、その演奏には余裕が感じられます。賞をとった自信が感じられます。

 ゲストにビッグ・ネームの名が見えるところもまた成功の余韻でしょう。「クリーピン・イン」では彼女の憧れの人でもあるカントリー界の大御所ドリー・パートンとのデュエットが実現しています。トリビュート盤への参加の返礼であるようです。

 そして、レヴォン・ヘルムとガース・ハドソンのザ・バンド組も参加しています。ノラ・ジョーンズとザ・バンドは一瞬意外な気がしましたが、考えてみれば何の不思議もない。ノラはザ・バンドの大ファンだそうですし、両者は米国のルーツ音楽指向で共通しています。

 2人と共演している「ホワット・アム・アイ・トゥ・ユー」は、すでにレコーディングされていたものの、しっくりこなかったところに、二人を招いて再録音したら素晴らしい出来になったのだといいます。さすがはザ・バンドです。

 カバー曲はカントリーのタウンズ・ヴァン・ザンドの「ベー・ヒア・トゥ・ラヴ・ミー」、酔いどれ詩人トム・ウェイツの「ロング・ウェイ・ホーム」、そしてデューク・エリントンのピアノ曲「メランコリア」にノラが詩をつけた「ドント・ミス・ユー・アット・オール」の三曲です。

 いかにもノラ・ジョーンズらしい選曲です。彼女の音楽に影響を与えた人たちが実に素直に表れてきます。そうしたところも全く自然体な彼女です。「自分が『好き』って思える音楽であれば、どんどんやっていきたい」。

 「わたしにとって音楽とは何か?あんまり深く考えたことはないけど、楽しむものであることは確かね」と、多くのミュージシャンも同じように語りますけれども、そう簡単なことではありません。何かと邪念が入るものです。新しさ神話もありますし。

 この作品も1000万枚を売り上げるモンスター・アルバムです。911後の古き良き時代への回帰の風潮もまだ売り上げに与していたのだと思いますが、浮かれずに地に足の着いたアルバムを放ったノラの勝利でしょう。

Feels Like Home / Norah Jones (2004 Blue Note)