1500万枚は重いです。フォリナーの4作目は超特大ウルトラ・ヒットになりました。3作目が期待外れだっただけに、起死回生の一発です。期待外れと言っても200万枚も売れているので、普通のバンドにしてみれば大成功なんですが、スーパー・グループは違います。

 本作品はジミヘンで有名なエレクトリック・レディ・スタジオで制作されました。同じ時期にこのスタジオでアルバムを制作たダリル・ホールは、完成後1年のツアーを終えて、スタジオに戻ると、フォリナーはまだこのアルバムを制作していたとあきれています。

 それほどこのアルバムは難産でした。前作の失敗もあり、「俺たちはどうしても楽曲を新たなレベルに押し上げる必要があった」と、リーダーのミック・ジョーンズは語っています。そのための産みの苦しみです。

 楽曲の方向性をはっきりさせる必要があると感じた彼らは、メンバー間で対立するようになり、結果的にオリジナル・メンバーのイアン・マクドナルドとアル・グリーンウッドは脱退してしまいます。そして、マット・ラングを共同プロデューサーに迎えて4人組で再出発です。

 こういう事情があるとアルバムは充実します。恐ろしいまでの充実度です。「このバンドを支えているのはアルバムを作っているという自負だ。フォリナーはアルバムを作るアルバム・バンドだ」とミックが語る通り、アルバムを通じて気力が漲っています。

 そういうことですから、アルバム単位で聴くべき作品です。10週連続全米2位という珍記録をもつ「ガール・ライク・ユー」のような大シングル曲もありますが、この名バラードも単体で聴くのとアルバムの中で聴くのとは随分感じが違います。

 単体で聴いていた時には、フォリナーも軟弱になったものだと思ったものですが、アルバムに置くと、前後のつながりは素晴らしく、この曲の必然性というものが実感されます。ただのバラードではありません。

 ボーカルのルー・グラムはますますその力強い声に磨きがかかりましたし、ミックとのソング・ライティング・コンビとしての存在がどんどん大きくなってきました。二人のハード・ロック回帰路線はここに完成をみました。80年代的なポップでハードなロックです。

 アルバムには多彩なゲスト陣が参加しています。有名どころとしては、R&Bのサックスの巨匠ジュニア・ウォーカーや、ルー・リード・バンドに参加するマイケル・フォンファラ、当時は無名でしたが、後にソロで大成功するトーマス・ドルビーを挙げておきます。

 各楽曲はもちろんさまざまな曲調があるのですが、アルバムの統一感は半端ないです。その意味でフォリナーの最高傑作と言えるでしょう。ここまで緊張感を持続させたアルバムをまとめるのは並大抵のことではありません。凄いです。

 このアルバムはついに英国でもトップ10ヒットになりました。英米混成バンドですが、ミックのギターはブリティッシュ・ハード的な湿り気がありますから、私には最初からブリティッシュ・ロックに聴こえていたので、ようやくこの事態に安堵しました。

4 / Foreigner (1981 Atlantic)