ご存じの方はそれこそ彼女たちの隅々までご存じのことと思いますが、知らない人は名前も聞いたことがないのではないでしょうか。無理もありません。小島みなみと紗倉まなは、独創的セクシーアイドル、簡単に言うとAV女優です。
 
 工業高専出身の工場萌え美少女としてデビューした紗倉まなは、小説も書きます。異色の経歴を持つ作家としては、又吉直樹の次に芥川賞を受賞するのではないかと噂されたこともある本格派ですから、女優の余技として馬鹿にしてはいられません。
 
 小島みなみは紗倉まなのライバルでもありますが、AVばかりではなく、アイドル・ユニットSEXY-Jや恵比寿★マスカッツなどのメンバーとしてアイドル活動をしているアニメ声の意欲的な女優さんです。
 
 この二人が組んだ何ともユニークなユニットがこの乙女フラペチーノです。そしてこの作品は彼女たちの3枚目のシングルCDです。お約束通り、DVDが付属していて、二人が脱力系のダンスを披露するMVとメイキング映像が特典として付けられています。
 
 「私ほとんどスカイフィッシュ」はいい加減な脱力具合のダンスとともに、そのメロディーが耳について離れません。何と言ってもスカイフィッシュです。「スカイフィッシュの捕まえ方」なるとんでもビデオ作品に出会ってからのお付き合いです。
 
 この曲はトリプルファイヤーの作詞作曲演奏による楽曲です。早稲田大学のサークルから始まった4人組のバンドで、「高田馬場のジョイ・ディヴィジョン」などと呼ばれることがあるそうです。これまでに3枚のアルバムを発表しています。
 
 大たい「ちゃんとしないと死ぬ」とか「なんかしゃべんないと友達になれない」とかそんな曲名の歌を歌っているバンドですから、こういうお遊び系の企画にはぴったりです。MVにもメンバーが出演して大はしゃぎしています。
 
 曲調は、企画ものだからなのか、80年代のテクノ・ポップを思わせます。ピコピコ・サウンドと乾いたギターの音、ひょうひょうとした佇まい。ジューシーフルーツとかジッタリン・ジンとか、そんな感じです。もっと悪意がありそうですが。
 
 対する「乙女の炎上」は多方面で活躍するマキタスポーツのプロデュース作品です。弾まない妙なラップ調の歌唱が二人の個性をうまく引き出していて秀逸です。二人の声の魅力を最大限に引き出すには、ちゃんと歌わせない方がよいと考えた末のラップでしょう。
 
 ブログの炎上を題材にして、あれもこれもぶち込んだ歌詞はなかなかのものです。私は♪キーボード弁慶♪という言葉を初めて知りました。全体にエロに行きそうでいていかない絶妙なラインをキープしていてさすがはおっさんです。
 
 女優の余技ならではの遊び心が横溢していて楽しいです。この後、彼女たちがどうなっていくのか予想もつきませんが、どうなろうともこのCDはプレミアムがつきそうです。大化けすればお宝として、そうでなければ稀代の珍盤として。
 
Watashi Hotondo Skyfish / Otome Frappuccino (2016 Magao)