変てこなアルバムです。時代の要請を受けて発表されたアルバムですけれども、使命を終えたのか、今では入手困難となってしまいました。まあ、他のアルバムで十分にカバーできるので、もはや必要ない訳ですが。

 ワム!は解散を表明します。解散の真相は反アパルトヘイトを標榜するジョージ・マイケルが南アフリカと係わり続けるレーベルに抗議したとか、音楽的な問題とかいろいろ言われていますが、解散自体にはほとんど誰も驚きませんでした。

 多くの人の感想は、来るべき時が来た、アンドリュー・リッジレーの将来はどうなるんだろう、というものでした。それほどジョージが突出していました。すでにソロ活動も本格化させていましたし、やむを得ないことだったのでしょう。

 この作品は、ワムの解散表明後に急きょ楽曲を寄せ集めて発表されたアルバムです。本国の英国では発売されず、北米と日本でのみ発表されています。英国その他では、代わりに2枚組の「ザ・ファイナル」が発売されました。

 そちらは、この作品の大半にこれまでのシングル・ヒット曲を加えたものです。ミックス違いはあるようですが、この作品に含まれていて「ザ・ファイナル」に欠けているのは「ブルー」のみです。これは何と中国でのライブです。

 そういう事情ですから、「ザ・ファイナル」は編集盤に分類され、こちらの作品は3枚目となる最後のオリジナル・アルバム扱いをされています。どうでもいいですよ~と言われそうですが、一応分類しておかないといろいろ困ることが出てきます。

 この作品の収録曲のうち5曲は、英国で1位となった「エッジ・オブ・ヘヴン」及びそれに絡むものです。この曲はエルトン・ジョンがピアノを弾いていることでも話題になった、いかにもヒットしそうな楽曲でした。

 絡む、というのはシングルでカップリングされたという意味です。英米でB面が違ったり、何種類もシングルが出ているのでややこしい。まるで昨今の日本のアイドルのようです。ファン泣かせな所業です。

 その中で注目はワズ(ノット・ワズ)の名曲「哀愁のメキシコ」のカバーです。オリジナルのスピード感はありませんが、さすがにジョージ・マイケルは上手いです。彼はどんな曲でも歌いこなす器用な人であることが良く分かります。

 その他の3曲は、ジョージのソロ・シングル「ディファレント・コーナー」、英国1位になった「アイム・ユア・マン」、それにクリスマスの定番中の定番曲「ラスト・クリスマス」です。一番売れた「ラスト・クリスマス」が英国1位になっていないのがご愛嬌です。

 かなり無理のあるデュオだったワムですけれども、後にシリアス路線になっていくジョージ・マイケルが、のほほんとしたアンドリューとともに、いかにも若いキラキラした魅力を振りまいていたことは確かです。それに何よりもいい曲ばかりでした。

Music From The Edge Of Heaven / Wham! (1986 Columbia)