とてもイングランド的なジャケット写真です。オーバーオールを着てギターを抱えたフレッド・フリスが草の生えた広い庭に立っているだけなのですけれども、イングランドの田舎の風景を強烈に思わせます。季節の良い6月頃の写真ではないでしょうか。

 牧歌的なジャケットと先鋭的なギター演奏はなぜかとても合っています。そこがフリスの醸し出す空気なのでしょう。ギター・ソロ作品の金字塔とも評価される作品なのに、ユーモラスですし、アコースティックな空気感が楽しいものです。

 この作品は、当時はまだヘンリー・カウのメンバーだったフレッド・フリスによるギターの即興演奏を集めたアルバムです。フリスのギター演奏を面白がったヴァージン・レコードがこうした機会を与えたわけで、当時のヴァージンの心意気が分かります。

 ヴァージンはこの後、「ギター・ソロ2」、「ギター・ソロ3」とギター・ソロ演奏集を発表します。その2枚はフリスだけではなく、フリー・ジャズの神様デレク・ベイリーなどとのコンピレーションで、フリスはそれぞれ2曲、3曲を担当しています。

 この再発CDは、もともとの「ギター・ソロ」にそれらの曲を加え、さらに1988年にニューヨークで行われたソロ録音を5曲加えたものです。フリスはオリジナルをリマスターして、ボーナスなしで発表することになりますから、このコンピはあまり気にいらなかったのかもしれません。

 フリスが使っているのはギターだけです。しかし、ジャケット裏写真に見られるように、クリップで弦を挟んだりして、ギターに加工を施す、いわゆるプリペアード・ギターも使います。さらに二つのギターを同時に弾いたりと、大人しいギター・ソロではありません。

 彼のパフォーマンスを見てみると、テーブルにギターを置いて、上から食品や釘やらなにやらをぶちまけながら演奏したりしています。二本同時に弾くというので、どうするのかと思いましたが、これならできます。

 逆に「ギター・ソロ3」の方ですが、ソロなのに掟破りなことに一つのギターを三人で弾いている曲もあります。さすがに映像がないとよく分かりません。ともかく、通常のギターの概念を打ち破り、無邪気にさまざまな実験を繰り広げているわけです。

 ほぼ完全に即興で制作されたとのことです。ギターからこんな音も出るのかと思わせるくらい、豊富な音色が出てきます。サウンド自体を楽しんでいるうちに時間が過ぎてしまいます。ギターの可能性を広げたとして当時のロック界に大きな波紋を投げかけたのも分かります。

 しかし、まるでフリー・フォームなのですけれども、たとえばデレク・ベイリーなどに比べると、ロックを感じるところが面白いです。たとえばブライアン・イーノがロックなのと同じような意味合いでロックです。ロックって何と考え込むと困るのですが、直感的にはロックなんです。

 とはいえ、フレッド・フリスはこの作品を機に、その世界を大きく広げていくこととなり、それは後の彼の実に幅広い活動領域に繋がっていきます。虚心坦懐に繰り広げられるソロ・ギターは彼の人となりを過不足なく表す名刺の役割を果たしました。

Guitar Solos / Fred Frith (1974 Caroline)