「スーパーヒーロー」では限定盤Bだったので、「ポンパラペコルナパピヨッタ」が入っておらず、もやもやしていましたけれども、3枚目となるアルバムにめでたく収録されました。代わりに「キラキラネス」は入っておらず、結果的に効率のよいことになりました。

 エビ中の三枚目は「穴空」と書いて「アナーキー」と読むようです。なるほど彼女たちの在り様を示しています。この作品もエビ中のアナーキーな魅力満載です。アイドル界は群雄割拠ですけれども、キング・オブ・学芸会ことエビ中はしっかり領地を確保しています。

 そのアナーキーは、三つ収録されている「インタールード」に顕著です。特に冒頭の「埋めてあげたい」ははちゃめちゃな寸劇仕立てですし、後半の「あな秋いんざ夕景」はみんなで俳句を読むという訳の分からない展開です。

 真山りかによれば、「今回のアルバム、『エビ中と過ごす一年』っていう裏テーマがあるんです」とのことです。確かに春夏秋冬、四季があるように思います。自分たちの四季を表現するというのも、年端もいかない年頃の子たちにとっては冒険であることでしょう。

 今回の作者は、インタールードが、劇団「シベリア女子鉄道」脚本家の土屋亮一、何だか得体のしれない関西系のCASIOトルコ温泉、電通の丸山博久となっています。ちゃんと作者がいるのが面白いところです。よく考えるもんです。

 曲の作者は、まず我々には阿部Bの方が通りが良いユニコーンのABEDON、ロックバンドHEREの尾形回帰、前作に引き続いての参加となるたむらぱんこと田村歩美、妄想系シンガーソングライターの吉澤嘉代子、エビ中に係わりの深い前山田健一。

 そして、オレンジレンジのRYO、ゼロ世代ハイブリッドロックバンドKEYTALKの首藤義勝、武道館公演も開催しているフジファブリックの加藤慎一、アイドルへの楽曲提供の多い杉山勝彦など。相変わらず多士済々です。

 バラード調の「お願いジーザス」、昭和歌謡風の「面皰」を除くと、アゲアゲの楽曲が並んでいます。前作に比べると楽曲の突き抜け感は少し後退しましたけれども、アーティストとしての表現力が増しているように思います。若い子は成長が速い。

 「アナーキーっていうのがどういうものかは完璧には分かっていないですけど、このアルバムを作って、自由感みたいなのは自分たちに合ってるのかなって思いました」とはぁぃぁぃの感想です。こんなコメントにも成長を感じます。

 エビ中の魅力の一つは余計な物語がないことです。学芸会というコンセプトはまことに素晴らしいと思います。お仕事感がとことん希薄なところが素晴らしい。だからと言ってアマチュアかというとそうではない。プロのアマチュアっていうことでしょうか。

 ところで「ポンパラペコルナパピヨッタ」は、本当にクイーンの「ボヘミアン・ラプソディー」へのオマージュなんでしょうか。ボーラプの途中のコーラスのパロディーなんでしょうか。年寄りの深読みっぽい気もします。まあ彼女たちには関係ないことでしょうが。

参照:CDJ2016年5月号 (南波一海)

Anarchy / Shiritu Ebisu Chugaku (2016 SME)