小中学校の頃、合唱と言えば音楽の授業での話でした。当時はまだカラオケなどありませんでしたから、人前で歌を歌う習慣もなく、合唱の時間などは苦痛なだけでした。クラス対抗の発表会なんていうものもありました。本当に面倒くさかった。

 そういう記憶しかないので、大学のグリー・クラブだとかアカペラ合唱団だとか、若い人々が合唱に興じる姿を見ると何だか違和感を感じていました。しかし、そんな感覚をあざ笑うかのように今や合唱はカッコいいことになっています。時代の流れを感じます。

 そんな事情には頓着なく、ヨーロッパでは合唱団が盛んです。これは教会のせいもあるのでしょう。イギリスも例外ではなく、あちらこちらに合唱団があります。歌が町を救う、というコンセプトの番組もありました。

 ウィリアム・ウォルトンは1902年生まれの1983年没ですから、私の年代からすれば同世代を生きた人です。20世紀のイギリスを代表する作曲家として親しまれています。「ペルシャザールの饗宴」は1931年に作られた彼の代表作です。

 この楽曲は、バリトン独唱を含む混声合唱と大編成のオーケストラのためのカンタータです。ブラスバンドが二つ入ったり、打楽器も大編成だったりと、とにかく派手な作品で、イギリスでも最も人気の高い合唱曲の一つだそうです。

 どうせやるなら大人数でどしどしやっていきたいと思うのは世の倣いです。ジェットコースター的な展開ですし、歌ってる人々はさぞや楽しいことだろうと思います。人気が高いのも良く分かる楽曲です。

 演奏しているのはアンドリュー・リットン指揮ボーンマス交響楽団と合唱団、ワインフリート・シンガーズ、バリトン独唱はイギリスを代表するブリン・ターフェルです。演奏場所はウィンチェスター聖堂で、そこでの録音にはデッカの技術の粋が尽くされています。

 ウォルトンは映画音楽も手掛けており、ジャズやラテンの影響も取沙汰される人です。そう聞かされるとなるほどと思います。古典よりも現代に近い曲の運びが伺えるんです。そんなところもイギリスでこの曲が人気がある所以でしょう。

 オール・ミュージックによるレビューでは、リットンがジャズ的な良さを引き出せていないとされています。そうだとすると、本来、もっとジャズっぽいということなんでしょうか。大合唱団でのジャズは難しいですから、これはこれで良いと思いますが。

 本作にはボーナスとして、ウォルトンの「テデウム」の他にヒューバート・パリーの曲が三曲追加されています。共通項はウィンチェスター聖堂にて録音された、イギリス人作曲家による合唱曲であるということくらいで、演奏者はほとんど被っていません。

 パリーの「エルサレム」が聴けるだけで私は満足です。この曲はEL&Pの「恐怖の頭脳改革」の冒頭に収められていた曲なので、私にとって原曲はプログレなんです。録音時期もEL&Pの方が先なので、もしかするとこの演奏に影響を与えているかもしれません。

Walton : Belshazzar's Feast / Andrew Litton, Bryn Terfel (1995 Decca)

エルサレムの方です。よろしければどうぞ。