前作で「10代最後の夏を駆け抜けた」たんこぶちんですが、この作品は「たこぶちん10代完結盤!」です。2016年3月をもって全員が二十歳になりました。人生の大きな区切りを迎えたわけです。それにしても若いですが。

 今回も3タイプ発表されていますけれども、曲は3タイプすべて共通でした。2015年11月に彼女たちはスペインの漫画フェスに参加してライブ演奏をしています。タイプAにはMVとその時の映像DVDが、Bには写真集が付いています。CはCDのみです。

 ライブ映像見たさに私はタイプAを購入しました。なかなか見ごたえのある演奏でしたが、欲を言えば、ライブをフルに収録して欲しかったです。ユリのギターとノドカのベース演奏ぶりがカッコよかったです。

 楽曲は全部で6曲です。シングルは「Bye Bye~君といた春~」で前作でも曲を提供していた大久保友裕の曲です。今作では彼の曲が3曲、マドカの曲が3曲で、いつもの鎌田雅人は2曲で編曲に携わっているのみです。

 作詞は大久保が係わっているものの、基本的にはマドカが担当しています。シングル曲は「10代から20代へと移り行くこの時期に味わう”希望感”と、紙一重の”切なさ”を表現した」とされています。「出会いと別れが交錯する『10代最後の春』を表す1曲」です。

 この曲は彼女たちにとっては「バンドとして新たな表現も手に入れることができた」のだそうです。ユリも「今までガムシャラにギターを弾くような曲が多かった中で、この曲はアルペジオが多く、切ないフレーズが多いので表現に悩みましたね」と語っています。

 基本は全体に元気いっぱいな若さに溢れた演奏なんですけれども、その中でも多少は大人になってきたという感じでしょう。初期の頃の初心の魅力も捨てがたいですが、こうして歳相応に成長する姿も眩しいものです。

 前作に比べると、今回はレコーディングに集中する時間がとれたそうで、そういう意味でも充実した作品なんだと思います。その証拠に全部で6曲、わりとバラエティーに富んでいて、落ち着いていろいろと試してみたあとが伺えます。

 私は最後の「さよならbaby」が好きです。この曲はとてもロック的です。少し前の時代のロックの雰囲気があって、ロック少女たちが奏でる曲らしく、アマチュアっぽい佇まいが初々しくて素敵です。だんだん手馴れてきた彼女たちが最後にこういう曲を持ってくるのが嬉しいです。

 他にもコール&レスポンスがガールズ・バンド的な「YOU」や、ちょっと変わった「monster」など、他の曲も充実しています。マドカのボーカルも艶を増してきましたし、演奏もどんどんうまくなってきているように思います。カッコいいです。

 ところで、ライブの映像を見ていると、稀有なバンドなんですから、ライブ盤を出してみてはどうでしょうか。冒険かもしれませんが、ネイキッドなアレンジでバンド・サウンドを展開する姿を切り取って残しておいてほしいと切に思います。

参照:eggman インタビュー