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この作品もA面B面1曲ずつの作品です。ジャケットもやっつけ感が漂うものなので、今一つ人気が出ないアルバムではないかと思います。しかし、この頃のフェラの例に漏れず、楽曲は素晴らしいです。
アルバムで物議を醸したのは、二曲目の「マットレス」です。フェラを絶賛する人々にとって、最もハードルが高いのが、彼の女性観です。27人もの妻を持ち、ハーレムを築いていたフェラを手放しで絶賛するのはなかなか世間的に厳しいものがあります。
この曲は、寝具としてのマットレスを歌った歌です。クッションであり、スプリングであり、その上で寝る物だということですが、途中から女性をマットレスと呼んでいるわけですから、フェミニストの皆さんはたまりません。
フェラ自身は、決して男性偏重主義者ではないと断言していますし、女性を愛することにおいて人後に落ちる人ではありません。しかし、アフリカの伝統を信じていますし、一夫多妻制を極端なまでに実践しています。
だからといってフェラを性差別主義者だと言ってしまってよいのか、大きな問題です。彼の妻たちのインタビューを読んでいると、いかに皆がフェラを愛し、愛されているかが分かります。こうして当事者に言われてしまうと、舌鋒が鈍るというものです。
タイトル曲の方は、フェラとカラクタ共和国をいろいろと非難する人々に逆襲するもので、彼らがごちゃごちゃ言っていることは、物売りのたわごとに過ぎないのだということを歌っています。ラゴスの街の喧騒を思い出させる歌です。
サウンドの方は相変わらず強力です。ボーカルが出てくるまでゆうに10分は経過しています。リズム・ギターによるカッティングが延々と続き、次第にホーンが加わって盛り上がってくるところなど素晴らしいです。テナー・ギターももちろん大活躍です。
引きずって引きずってボーカルが登場するとやはり盛り上がります。コール&レスポンスの効果もリズム・セクションやギターと同じように、繰り返しのリズムによる幻惑なのでしょう。すべてが一つのリズムに収斂していきます。
「マットレス」の方もやはり強力なトラックであることに間違いありません。ホーンとオルガンによるイントロに、ドラムスが加わって、静かにねっとりと始まる楽曲です。この曲では、ボーカルは♪マットレス、マットレス♪と、いつにも増して吐き捨てるように攻撃的です。
あまり人の口の端に上るアルバムではありませんけれども、フェラの黄金時代の作品の一つとして重要なアルバムです。この時期のフェラは何をやっても素晴らしい。ジャケットにももう少し気を使ってもらえるとなおよかったとは思いますが。
Noise For Vendor Mouth / Fela Ransome Kuti & Africa 70 (1975 Afrobeat)