![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160403/14/memeren3/d0/30/j/t02000175_0200017513610080587.jpg?caw=800)
この作品は2009年に発表されたアルバムで、新しいアーティスト名キャプテン・サムライ・フラワーを名乗っています。その後も継続的にこの名前を使用しているわけではなさそうですから、これはこのアルバムのコンセプトに合わせた名前です。
そもそもパスカル・オビスポという名前自体がパブロ・ピカソのアナグラムになっています。彼にとってステージネームというものはそういうものなのでしょう。今回は、アルバムとしてのトータリティ―を追求した結果、新たなキャラクターが必要になった模様です。
キャプテンは侍とはいいながらフランスの剣士の格好をしていますし、マスクは怪傑ゾロのようです。そのキャプテンが乗組員とともに方舟にのって冒険の旅を続ける様を、アニメと音楽をシンクロさせて、マルチメディア・ショーで表現するというのが今回の試みです。
題材はもちろん地球環境問題です。地球環境破壊への警告、生物多様性の保護などを訴えかけるキャプテンです。ブックレットも気合が入っており、人類愛に満ちた作品になっています。つい斜に構えてしまいますが、ここは素直に受け止めたいものです。
私はクラブ・ミュージック系のサウンドを期待してジャケ買いしたのですけれども、全くお門違いでした。オビスポは正統派フレンチ・ポップスのシンガーソングライターです。そのアルバムはほとんどが100万枚を超える売上を誇るフランスのお茶の間の英雄でした。
この作品もフランスではチャートの2位に上るヒットとなり、ゴールド・ディスクに輝いています。フランス人の琴線に触れるサウンドが繰り広げられていることは想像がつくことでしょう。ミシェル・ポルナレフの後継者に置いてもちっともおかしくない人です。
アルバムに詰まっているフレンチらしいしっとりとしたリズムとメロディーはフレンチ・ポップの王道です。歌謡曲に親しんでいる私としては、とても聴きやすい曲ばかりです。耳に引っかかる美メロと適度にまったりしたリズムがいいです。
この作品からは、「ル・ドラポー」と「イデアリスト」の2曲のヒットが生まれています。この「ル・ドラポー」の評判がよろしくありません。とてもいい曲なのですけれども、前年に大ヒットしたコールドプレイの「ヴィヴァ・ラ・ヴィダ」に似ているというのです。
オールミュージックのサイトは特に手厳しく、どちらもフランスでトップ10ヒットとなった両曲の類似を「犯罪的」とまで嘆いています。他にもビートルズっぽい曲もありますから、そう思い出すとなかなか気持ち良くは聴けないのが残念なところ。
さはさりながら、このアルバムに収められたキャッチーな曲の数々には耳をとられてしまいます。テーマの選び方といい、どうしてもぬるい感じがしてしまいますけれども、これはこれで、フランスを代表するアーティストの作品として愛でたいものです。
Welcome To The Magic World Of Captain Samourai Flower / Pascal Obispo (2009 PO)