愛読しているCDジャーナル誌ではこれでもかこれでもかとハロー!プロジェクトの特集が組まれています。毎号毎号の刷り込みが功を奏して、ついに思う壺にはまってしまい、アイドルたちの中では最も力がありそうな℃-uteを買ってしまいました。

 ハロー!プロジェクト、略してハロプロはもとはモーニング娘。のファンクラブの名称だったそうです。その後はジャニーズの女性版として、芸能界に確固たる地位を占めていると言ってよいでしょう。

 モー娘。全盛期の2002年にハロプロ・キッズオーディションが開催され、15名が合格しました。この中から2004年にモモチのいるベリーズ工房が誕生し、残った7人は中途半端な状態のまま苦難の時代を過ごします。

 そして2005年になってようやく残りの7人によるグループ、℃-uteが誕生しました。その後、メジャー・デビューまで1年8か月を要するなど、さらに苦労が続きますが、その甲斐があってか、今や全てのシングルがオリコンでトップ10入りする人気グループになりました。

 ハロプロはつんく♂が長らく総合プロデューサーを務めていましたが、現在では引退しています。この作品は前作から2年以上の間があいて、つんく♂以降初めてのアルバムです。オリジナルアルバムとしては8枚目になります。現在のメンバーは5人です。

 日本のアイドル・グループは一方にAKBグループ、もう一方にハロプロ勢、そしてももクロやパフュームなどの第三の勢力があります。さらにご当地アイドルを加えていくと、まさに戦国時代、信長の野望の世界です。

 その中で℃-uteはどうか。私は彼女たちのパフォーマンス姿を見て驚きました。まるで韓流アイドルのようなんです。日本のアイドルはAKBに代表されるように子どもっぽい。ところが℃-uteはくっきりと大人っぽいです。

 大人っぽいと必要以上にセクシーさが強調されがちでしたが、韓流アイドルがそうでないように、℃-uteは健康的に大人っぽい。これは目から鱗でした。また、パフォーマンスの技術が高い。苦労の時代を経てきた賜物だと思います。

 お子様でもSFでもセクシー・ダイナマイトでも学芸会でもない、世界標準のアイドルだと思います。何だか見ていてほっとしました。とはいえ、アルバムを聴いただけでそういう姿が想像できるかというとそうでもありません。わりと普通にハロプロっぽい。

 しかし、「℃maj9」のアカペラ・コーラスなどにその実力の片鱗が見えますし、楽曲全体に落ち着いた雰囲気が漂っているところに彼女たちの大物感が感じられます。前半部分のつんく♂後の楽曲群と後半のつんく♂作品との微妙な差も成長の証でしょう。

 アイドル界もクラブ界と同様に、その評論の世界は普通の人には近寄りがたいのですけれども、℃-uteはもう少し幅広い層にアピールできるのではないかと思います。コアなファンだけに独占させるのは惜しい逸材です。

Cmaj9 / ℃-ute (2015 Zetima)