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ジャマイカの田舎に生まれたシャバ・ランクスがキングストンに移住したのは8歳の時です。結構小さい頃からDJをやっていたそうですが、本格的に人気を獲得するのは、シャバ・ランクスという名前を付けられてからです。本名はレクストン・ゴードンです。
初アルバムは、1988年の作品で、チャカ・デマスと片面ずつを分け合ったという変則的なものでした。チャカ・デマスも私は大好きなので、このアルバムはぜひ聴いてみたいと思っていますが、なかなかチャンスが巡ってきません。
シャバはダンスホールの帝王であり、世界的な成功を収めた最初のジャマイカンDJと言われます。ボブ・マーリーやジミー・クリフのようなクラシックなスタイルのレゲエではなく、ダンスホールと呼ばれるダンス志向のレゲエです。
1991年からは英国のヒット・チャートの定連となっています。そして、彼の最初の大ヒットが全英3位まで上がった「ミスター・ラヴァーマン」です。この前後のシャバはチャート的には最も充実していた時期でしょう。
この当時は、アメリカのパンクとも呼ばれるグランジが流行っていました。ダンスホール・レゲエも、この頃から英国でも知られるようになっていたことから、よく同列に論じられていたものです。何でもパンクと言いたがる英国人ですから、レゲエのパンクです。
この作品は、1999年にソニーから発表されたシャバ・ランクスのベスト盤で、タイトルにある通り、「ミスター・ラヴァーマン」を中心にしています。私もまんまとしてやられ、ベスト盤とは知らず時懐かしさのあまり、ついつい手が伸びてしまいました。
ダンスホールはリディムと通称されるリズムに乗せてラップをかますのが基本です。シャバ・ランクスは過激な歌詞で知られています。英語国民でない私にはちんぷんかんぷんですけれども、彼のライムの心地よさには心底心服いたします。
「ミスター・ラヴァーマン」は女声ボーカルのシェヴェル・フランクリンのコーラスをフィーチャーした楽曲で、掛け合いというわけではありませんが、女声と男声の対比が素晴らしい。それに♪シャバ~♪という合いの手が入るところが脱力でいいです。
シャバの声は美声からは程遠く、力強いけれども、ちょっと脱力感も感じさせる不思議な声です。洗練されているとは言い難い、わざと汚くしたような演奏に乗せて、およそ歌手らしくない声のラップが伸びていきます。そこが猛烈にカッコいいです。
もちろん、ベスト盤だけに、シングルでヒットした曲が満載されており、シャバ・ランクスの魅力が堪能できます。何度も聴きたくなるし、中毒性がとても高い。キングストンの音楽シーンは恐るべきものでした。西欧的な洗練をまるで目指さない姿勢が最高です。
Loverman / Shabba Ranks (1999 Sony)