シュープリームスが初めて全米アルバム・チャートを制した作品です。ガールズ・グループ初の快挙というおまけまでついています。モータウンからの多くのガールズ・グループの中でも最強と言われる彼女たちならではです。

 しかし、皮肉なことですが、あまりグループ臭がいたしません。この頃になるとダイアナ・ロスと仲間たちのような感じになってきていて、このアルバム発表の翌年にはダイアナ・ロス&ザ・シュープリームスと改名することになります。

 なお、この紙ジャケ再発盤では、日本語のクレジットはすでにダイアナ・ロス&ザ・シュープリームスとなっています。日本でも圧倒的にダイアナ・ロスの人気が高いので、彼女の出発点となったグループとしてのなじみが深いのでしょう。言わばダイアナ前史。

 この作品は英国でも15位のヒットを記録しています。ダイアナ・ロスは白人層にも受け入れやすい歌手なんです。その点で、彼女の友だちマイケル・ジャクソンと似ています。黒すぎない。マイケルもキング・オブ・ポップ、決してキング・オブ・ソウルとは呼ばれません。

 一曲だけ、ジェニファー・ハドソン、じゃなくてメアリー・ウィルソンが歌っている曲があります。ダイアナ・ロスに比べるとより黒っぽいボーカルです。マーサ&ザ・ヴァンデラスの曲で、本人の希望のようですが、残念ながら、何とも中途半端な出来栄えです。

 これはモータウンの社長ベリー・ゴーディーのいじめではないかとも勘繰りたくなります。そのベリー・ゴーディーのテーマ曲「マネー」のカバーが収録されているところがまたご愛嬌です。この人はモータウンの憎まれ役です。

 ダイアナ・ロスのボーカルはデビュー当時とは比較にならないくらい堂々として力強いです。自信に満ち溢れていて、まさに本領発揮です。その分、後の二人が完全に脇に追いやられており、それがグループ感を薄くしている理由です。

 アルバムの中には、フィル・コリンズがおっさんダンスでカバーした「恋はあせらず」が際立っています。当然のことに全米1位を記録したシングルで、彼女たちの代表曲の一つになっています。いかにもホランド・ドジャー・ホランド作品です。

 しかし、シングル曲はこの曲と「恋は切なく」の2曲のみで、残りはすべてカバー曲です。同じホランド・ドジャー・ホランドとの組み合わせで成功したフォー・トップスの曲が3曲、アイズレー・ブラザーズが2曲、テンプテーションズが1曲などとなっています。

 どれもヒット曲ばかりで、当時のモータウンのアルバムらしいです。要するにアルバムの埋め草はヒット曲のカバーにする。まだまだシングル中心のレコード市場でしたからやむを得ないのですけれども、おかげでこうして名曲カバーを堪能できるのですからよしとしましょう。

 ガールズ・グループはいずれ解散する運命にあるのでしょう。目立つリードがいないと売れないし、売れるとリードが目立ちすぎる。どんどん、その因業な道に進んでいくシュープリームスの姿がよく表れている作品です。

The Supremes A' Go-Go / The Supremes (1966 Motown)