パフォーマンスと言えば、私は田中泯の街中での舞踏、ヨーゼフ・ボイスの「コヨーテ-私はアメリカが好き、アメリカも私が好き」をまず思い浮かべます。どちらもこの目で見た訳ではありませんが、写真を交えたその話に大そう興味をそそられたものです。

 ボイスのコヨーテは、ニューヨークのギャラリーでコヨーテと一週間にわたって生活をするというパフォーマンスで、空港との往復はアメリカに接触しないよう車に閉じ込められて直行するというものでした。何やってんだこの人は、とあきれたものです。

 コンラッド・シュニッツラーはヨーゼフ・ボイスの門下生の一人です。そういう人ですから、パフォーマンスはむしろ彼の本来業務です。そんな人の録音テープを聴いているということなので、不完全燃焼感がぬぐえません。パフォーマンスを目撃したかった。

 そんな不完全燃焼をさらに際立たせるのがこの作品です。これは「シュニッツラーがストリート・パフォーマンスを行った際に使用された音源である」んです。ストリート・パフォーマンスって何?と思うわけです。

 公式サイトによれば、コンさんは、「2台のカセット・プレイヤーとミキサー、またはバッテリで駆動するシンセサイザを携帯し、その場で生成したサウンドをアンプ付きメガフォン・ヘルメットから流しながら、街や公園、展示会場内を練り歩きました」。これがパフォーマンスです。

 謎が深まります。このアルバムのサウンドは、パフォーマンス中に生成したサウンドなんでしょうか。それとも、カセットからは実は録音済のテープが流れてきていて、この曲は、そのテープ音源なんでしょうか。

 そう考えるのは、この作品の12曲がすべてシンプルな電子音で出来ているのに対し、ボートラの13曲目は音をミックスした曲になっているからです。ここでのサウンドは素材で、これを流しながら、同時に音を生成してミックスして流したのかなと思ったんです。

 パフォーマンス風景は「コン3」に少し写っていました。それは、このアルバムのジャケットのものとは少し違う拡声器付きヘルメットと、マイクを備えた頭部オブジェクトのハリーで装備したコンさんでした。踊っている風情はありませんでした。

 公式サイトも「練り歩きました」となっていますから、けして踊っているわけではなさそうです。あくまで音を中心にしたパフォーマンスなんでしょう。その場に居合わせた人の中に、音源を売ってくれという人が現れたのでこうして発表しているんだそうです。

 ともかく、そんな音源ですから、通常の音楽CDとはかなり性格が異なります。さまざまな音に満ちた屋外で流されるので、静かな環境で聴くのは違う気がしますし、ただ音源に耳を傾けるというのも違います。

 結局、右往左往して聴いてしまうことになり、不完全燃焼度がいや増しに高まる結果となりました。しかし、コンラッド・シュニッツラーの作品は音に対する慈しみが強いのか、どれもこれも音が本当に綺麗で、純粋にその音に感動してしまいました。

Context / Conrad Schnitzler (1981 Private)