真っ白いジャケットにスタンプで「コンテンポラ」と押してあるだけのシンプルこの上ないジャケット、封入されているのは新聞紙とシートが一枚。これを再現するために、このCDはシリーズの他の作品よりも500円高くなっています。

 普通、割高にするのは変形ジャケットだとか豪華なジャケットの時でしょうし、封入されているのが豪華な写真集だったりする時だけでしょうが、ここはどちらも当てはまりません。でも、だからこそ大変価値があると思います。

 コンラッド・シュニッツラーは徹底的に自分の作品を管理している人です。その彼が自身の手で隅から隅まで作り上げた作品を再現するのですから、徹頭徹尾オリジナルに忠実であることが彼へのオマージュになります。

 今回封入されているのは、四つ折りで両面に印刷のある81年5月27日付けの「インランド」紙の一枚。そこには小さく「コンテンポラ」の文字が空いたスペースに印刷されています。音楽と新聞のメディア・ミックスです。パフォーマーには重要な事柄です。

 またもう一つの封入物は例のスピーカー付きヘルメットをかぶったコンさんのシルエットで、下の方にエンボス加工で文字が浮き出ています。これにお金がかかった模様です。この二つの意味はよく分かりませんが、何だか楽しい気分にはなります。

 このアルバムは1981年に自主制作されたもので、プレス枚数は500枚でした。ジャケットは見ての通りのシンプルさですし、裏には何も書いてありません。オリジナルは全部で13曲、CD化に際して9曲のボーナス・トラックが加わりました。すべて曲名はありません。

 リリースの順番がよく分かりませんが、日本語版公式サイトによれば「コン3」の一つ前ということです。あのボーカル入りのノイエ・ドイッチェ・ヴェレ風味の「コン3」です。そう言われればなるほどなというサウンドです。

 こちらにはボーカルは入っていませんし、リズム・ボックスもほとんど使われていませんが、ポップな感覚は「コン3」に近いと思います。また、音の処理の仕方は「コン」に近いようにも思います。そりゃあ同じ人の同じ頃の作品ですから似ててもおかしくないのですが。

 リズミカルなサウンドで、カワイイ電子音による装飾がとてもポップです。各トラックは長くて7分強、短いものだと2分弱。アルバムとしてのまとまりがしっかりありますが、一体、彼はどうやって制作したのでしょうか。

 のべつまくなしに録音していたものを編集したのか、それともアルバムを作ろうと意図をもって録音したのでしょうか。一発録音だと聞いても驚かない覚悟はあります。コンラッドにとってのアルバムの位置づけを聞いてみたいです。

 音が綺麗です。1981年だというのに、鮮やかな瑞々しい電子音が流れてきます。実験的な作品ではなく、ポップな小品集の面持ちで、流れていると、サイバーな空間が現前してまいります。ほんと、面白い人です。

Contempora / Conrad Schnitzler (1981 Private)

音源が違いますが、見当たらないので、オフィシャル・ビデオをどうぞ。