この作品の元になっているのは、コンラッド・シュニッツラーがドイツのRCAレコードに残した12インチEP「黒いチャンネルで」です。そのEPに未発表だった81年録音の「コンシークエンス3」がカップリングされています。

 もともとクレジットはなかったものの、「黒いチャンネルで」こそが名作「コン」の続編にあたる「コン2」だったということで、このカップリング作品は「コン2+」と題されています。色シリーズの後はコン・シリーズで、これは3まで出ます。

 キャプテン・トリップからCD化されたのが世界初の模様です。同レーベルの一連のコンラッド作品は、コンラッド本人としっかり話し合いながら丁寧にCD化されていて、頭が下がります。日本にこんなレコード会社があることを誇りに思います。

 「黒いチャンネルで」は、オリジナルのジャケットには右上の方に「ディスコ・リミックス」と書かれています。コン・シリーズではありながら、前作「コン」とは作風が随分異なります。シリーズにする意味があったのか疑問ですが、それも彼らしいです。

 何が違うといって、まずボーカルが入りました。そしてドラマーが参加しています。ドラムはKのクラスター時代からの盟友ウォルフガング・サイデルです。彼はもともと政治的なバンド、トン・シュタイネ・シャーベンでドラムを叩いていた人です。

 サイデルはヴォルフ・シークエンツァとクレジットされており、コンラッドとシークエンツァでコンシークエンスというユニットになります。そのユニットの三作目に相当するのが、カップリングされている未発表の「コンシークエンス3」となっています。

 ボーカルはヴォコーダーで処理された声なのですけれども、ビートはハウス以前のアナログ感覚ビートなので、前作までよりもクラブ音楽的な雰囲気は後退しています。オリジナル・ジャケットには「ディスコ・リミックス」とキャプションが入っていますが、ちょっと雰囲気が違います。

 どちらかと言えば、当時のニュー・ウェイブ的なサウンドということになるでしょう。ジャケットの顔が覆面レスラーのようになってきており、下世話な感じが漂っています。サウンドも前作までの浮世離れしたところはありません。ちょっとクラフトワーク的ですし。

 「コンシークエンス3」はなぜ未発表だったかという点については、コンさんが「ボーカルを入れることが出来なかった」と語っていることから、歌物にしようと思っていたけれども、その意味では完成させられなかったということではないかと思います。

 全曲インストゥルメンタルで、リズム・トラックにエレクトロニクスの上物がわりと控えめに乗っかる構造ですから、ボーカルが入る余地が残されているように思います。それに分かりやすいビートなので歌いやすいでしょうし。

 コンさんは、この後、レコード会社との契約を拒否するようになり、コマーシャルな成功に背を向けることとなりました。音楽で金もうけをしないという意味もあったのでしょうが、世に問うためにはレコードを発表せざるをえず、矛盾を抱えた道行となったのではないでしょうか。

Con 2+ / Conrad Schnitzler (1980 RCA)