色シリーズの最終章は「緑」です。結局、この色シリーズは何なんでしょう。内容と各色は無関係だということです。内容は5枚ばらばらです。となると、黒赤青黄緑はどれも色だという意味では同じですが、それぞれが共通点を持たない、そういう意味なんでしょうか。

 この作品は1981年にハンブルグのレーベルであるエディション・ブロックから500枚限定で発表された作品です。しかし、音源はすべて1972年から73年にかけて録音されたものだそうで、それを編集したのだそうです。

 そうなると色シリーズの意味合いは70年代初期の作品という共通項を持った音楽ということになるのでしょう。いろいろな試みをしていた時期に録音された作品群に色が与えられたと、そういうことなのでしょう。

 この作品はまたまたA面B面各1曲ずつの構成に戻りました。A面に置かれた曲「旅そしてセーヌの女」は最初から最後まで、リズム・ボックスのような音がリズムを刻みます。それを基調にぴゅんぴゅんとシンセが唸るという作品です。

 シュニッツラーには珍しいタイプの曲で、一般的な人気を博しているようです。ただ、この曲は比較的オーソドックスな電子音楽系プログレに見られる構成です。特にポップな味をもったジャーマン・プログレ系によくあるものです。

 ということで、一歩間違うと、とてもつまらない曲になってしまいますが、そこはさすがに音響彫刻家は違います。ビートの力強さや唸るシンセの迷いのなさが、ハイセンスに迫ってきます。こんなに生き生きとこれをこなせるとは只者ではありません。

 この曲はオリジナルとはミックスが違います。時間がほぼ5割増しとなっています。もちろん伸びた部分に劇的な仕掛けがあるわけではなく、気持ちの良い時間がそれだけ長くなったということです。

 B面の「青い花が開くまで」は問題作です。A面は同じビートが基調でしたが、こちらでは短くてキャッチーなメロディが全編に繰り返されます。耳に残る哀愁漂うメロディーはこれまたなかなか貴重なものです。

 この曲は二通りの聴き方が提案されています。45回転と33回転です。このCDでは最初が通常の33回転、ボートラで45回転が収録されています。メロディーをじっくり味わうにはやはり33回転でしょう。

 以前、鈴木昭男と小杉武久のデュオ作品をLPで聴いていた際、えらく短い作品だと思ったら45回転にしていたということがありました。意外とそれでも聴ける作品というのは多いものです。この曲も45回転でも結構いけます。

 BPMが上がっている昨今ですから、実はA面を45回転にしてみても面白いかもしれません。意外と普通にテクノなんじゃないでしょうか。そんなところに時代が出てきます。お茶目な本作はいろいろな楽しみ方ができる良作です。

Grün / Conrad Schnitzler (1981 Edition Block)