「色シリーズ」第三弾は「青」です。黒、赤と来て青。続いて黄、緑と続いて行きます。深遠な意味がありそうですが、日本語版公式サイトによれば、「ジャケットの色は収録作品のイメージとは無関係だそうです」。

 確かにコンラッド・シュニッツラーは純粋に音を追及する人ですから、ジャケットやタイトルにほとんどこだわりがなさそうです。とすると色シリーズが5作だけだったのは、それ以外の色の紙が入手しずらくなったからではないかとも推測されます。

 この作品は1974年にプライベート・プレスで500枚限定発売されたものです。同年には「黒」と「赤」を交えてボックス・セットとしても発表されています。こちらは100セットのみの限定で、それぞれにライブ音源のカセットが付けられました。

 そのカセットは100個とも全部音源が異なり、さらにマスターテープなんだそうです。あな恐ろしや。普通は通し番号を入れるくらいで唯一感を出すものです。それぞれに全く違う音源を付けるなんてとんでもない試みです。

 たとえばデレク・ベイリーなどの即興アーティストと共通する姿勢だと言えるかもしれません。しかし、生楽器と電子楽器の違いは大きいので、全く違うとも言えます。ともかく常に録音しているというあたりに自らの過去音源へのこだわりが感じられます。

 「青」も2曲入りです。A面が「暴徒は山に逃げ込んだ」で、B面が「木星」です。前作同様、曲のタイトルは他人が付けたのだそうです。ただ、なぜこの題名なのか、前作とは異なり、はなはだ分かりにくいです。ここは無意味としておくのがよさそうです。

 ここでのサウンドは圧倒的にミニマルです。泡のような粒粒のサウンドがぽこぽこなり続けます。ミニマル・ミュージック指向は電子音楽の一つの大きな流れになります。その源流の一つがここにあったと言えるでしょう。

 電子楽器にミニマルはなじみやすいです。何と言ってもパルスですから。それに電子楽器は繰り返しが得意です。黙って何度でも繰り返してくれます。朴訥なシンセの醍醐味とも言えると思います。

 ここでは、シンセだけではなくて、「暴徒は山に逃げ込んだ」ではギター、「木星」では声が加わっています。どちらも後半にかけて、ギターそして声がアンビエント的な効果をもってコラージュされています。

 初期の傑作に数えられるだけあって、はつらつとした音のつぶつぶに体が浮遊させられるようで、気持ちの良いことこの上ありません。コンラッド・シュニッツラーの音楽のプロトタイプの一つで、このサウンドは彼のトレードマークとなっていきます。

 ボーナス・トラックは短い曲が6曲、いずれもタイトルは「ワイルド・スペース」です。こちらは同じ録音時期ながら、本編とはうって変わって、キラキラした音ではない、ワイルドな音によるドローン中心の音です。ちょっとボートラには合わないように思います。

Blau / Conrad Schnitzler (1974 Private)