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この作品はKのクラスターによる録音です。Kのクラスターは少なくとも12回のライヴを行い、3枚のアルバムを残しています。そして、これは彼らの最後のライブを録音した3枚目の作品ということになります。
しかし、発表はコンラッド・シュニッツラー名義で彼のプライベート・プレスによって行われています。これにクラウト・ロックを支えたエンジニアでKのクラスターにも係わったコニー・プランクが苦言を呈したことから、二人の間に確執が生まれることになったという逸話があります。
曲名は「エラプション」と付けられており、ややこしいことに、この後、コンラッドはエラプションというバンドを結成して活動しているので、これはエラプションによる録音であるかのように誤解されたこともあったようです。そのエラプションによる音源はボートラになっています。
さらに、1997年にはドイツのレーベルからKのクラスターの「エラプション」という題名でCD化されています。何やらややこしいのですけれども、Kのクラスターの残りの二人、レデリウスもメビウスも特に不満があるわけでもないようなので、良しとしましょう。
この後、レデリウスとメビウスはコンラッドと袂を分かちます。二人は彼の方向性に同意できなくなり、コンラッドは二人のミュージシャンとしてのインプットに耐えられなくなったということです。ただ、喧嘩別れではなく、円満な別れになっています。
作品は1と2に分かれています。LPのA面とB面なので、便宜的な分け方なのかと思っていました。しかし、実際に聴いてみると、1と2では使っている楽器(?)が違っているようにも思えます。2に入った途端に打楽器的なリズムが鳴ります。やはり、1部と2部なんでしょう。
Kのクラスターの前2作はボーカルと言うか、教会の宣伝入りでしたから、ボーカルの入らないこちらのサウンドとは随分と聴いた感じが違います。それに録音が前の方が格段によいので、少しこちらは分が悪いです。
Cのクラスターとなるレデリウスとメビウス組とコンラッドとの間にはやはり対立があったのでしょう。それがこの作品にも表れているように思われます。どこまでも非音楽を追及するコンラッドと根っからのミュージシャンが共演する矛盾がこの作品の醍醐味です。
プライベート・プレスはわずかに200枚限定でした。そんな作品が、日本で紙ジャケ化されている幸せをかみしめる必要があります。しかも、ジャケットに使われた紙は、オリジナルと同じものをわざわざドイツから取り寄せたという泣ける話が伝わってきました。
コンラッドは、この作品を皮切りに「色シリーズ」と呼ばれる作品群を発表していきます。これ以外はソロばかりなので、この作品はある種特異な位置づけにあります。同時に彼のソロ・デビューでもあるので、まずは彼の出発点をゆっくり鑑賞いたしましょう。
Schwarz / Conrad Schnitzler (1971 Private)