「ブラック・アルバム」は当然、かのビートルズの「ホワイト・アルバム」を念頭に置いています。ダムドの場合は、実はジャケット選びが面倒くさいからという理由だった模様です。いかにも意見がまとまらない時に出てきそうなアイデアです。ダムドらしいです。

 前作から約1年を経て発表された4枚目のアルバムは、変則的な2枚組でした。1枚目は普通のアルバムですが、2枚目は片面に約17分に及ぶ「カーテン・コール」1曲のみ、D面は過去のヒット曲のライブ録音です。

 「ホワイト・アルバム」に肖ってしまったがために、2枚組にせざるをえなくなったのではないかと推測される構成です。形から入る。そんなやり方があってもよいと思いますから、これはこれでありでしょう。2枚目はとっても楽しいですし。

 ただし変則的なだけにCD化に際してややこしいことになります。都合が良いことに1枚目とC面を足してCD1枚に収めることが可能でした。そういうわけで最初にCD化された時にはその形で1枚にまとめられています。

 さらにライブはライブで完全盤が出てしまいます。「ライブ・シェパートン1980」がそれです。そうなるとわざわざオリジナル・フォーマットで発表することはないのですが、そこは私のようなファンの頑固なオリジナル志向が許しません。

 この作品はめでたくオリジナル通りの形で紙ジャケ再発されました。しかもライナーノーツまでオリジナルのミッキー森脇氏のものが使われています。しかし、ルー・エドモンドはマハヴィシュヌ・オーケストラにはいなかったと思うので、訂正しておいてほしいところです。

 メンバーはベースがエディー&ザ・ホットロッズのポール・グレイに変わりました。ダムドはなかなかリズム・セクションに見どころがありますが、このポールのプレイもなかなか結構です。ラット・スキャビーズのドラムと一緒にタイトなリズムを繰り出しています。

 ミッキーさんも書いている通り、「誰も今、彼らがパンクであるか否かを彼らに問いはしない」。彼ら本来の持ち味であるポップさが格段に進化を遂げて、落ち着いた演奏とともに英国のメジャーなロック・サウンドにのし上がって来ています。

 とりわけC面を占める「カーテン・コール」はドラマチックな構成の妙を見せるプログレ的楽曲です。若干、水増し感がないことはないのですが、キャッチーなリフと音響効果は見事な世界を描きだしています。

 キャプテン・センシブルによれば、このアルバムは彼らの進化の方向であるゴスの萌芽となっています。デイヴ・ヴァニアンの描く世界はどんどん暗くなっていきました。明るいパンクのダムドが徐々におどろおどろしいゴシック世界に近づいていきます。

 しかし、ライヴは文句なくカッコいいです。それまでのダムドのパンクな世界がそのまんま楽しめます。D面だけ浮いていると言えば浮いている。しかし、どちらもダムドの魅力ですから、ごちゃごちゃ言わずに両方を受け止めましょう。

The Black Album / The Damned (1980 Chiswick)