ロンドン・パンク初のLP作品として歴史に残る作品です。いかにもなチンピラ感てんこもりのジャケットは秀逸です。最初の1000枚はエディー・アンド・ザ・ホットロッズの写真が間違って裏面に使われていたという脱力のエピソードもふさわしいです。

 ただし、ダムドが登場した頃は、パンク・ロック黎明期です。シングル発売記念にラフ・トレードでサイン会を開いたらわずかに3人しか来なかったそうです。当時、パンクとは何かということが議論されている最中でしたし、大きな動きにはまだなっていなかったんです。

 ダムドは英国三大ないし五大パンク・バンドの一つとして、当時のロンドン・パンクの代表選手のように思われていますけれども、メンバーの一人、キャプテン・センシブルは「自分たちとストラングラーズはパンクのイ ンナーサークルからは疎外されていた」と語っています。

 ストラングラーズは確かにパンクとは一線を画していましたが、ダムドはど真ん中にいたよう に思うので意外に感じます。ダムドの脳天気なパワーがシリアスなパンク界では浮いていたということでしょう。ダムドはパンク界のお笑い担当でした。

 聴きなおしてみて、ふと「スイング・ガールズ」を思い出しました。あれはとてもいい映画でした。大団円でのジャズ娘たちの演奏シーンは本当に素晴らしかったです。あれほど楽しげにセーラー服で演奏されると感動的です。

 素人の魅力全開。素人の音楽というとへたくそさを愛でるという方向もありますが、スイング・ガールズは違います。彼女たちから湧き出る得体の知れない勢いが音楽にあふれ出ていました。何よりもそこが魅力。

 このダムドの魅力はそんな「スイング・ガールズ」の魅力に似ています。この作品の疾走感はドラッグのせいだという説もあります。得体の知れなさが倍加しているのは、おそらくドラック故なのでしょう。「スイング・ガールズ」の場合は腐った弁当でしたが。

 CDだけ聴いても、「スイング・ガールズ」の魅力は十分伝わりません。ダムドもそうです。ダムド主演でパンク・ボーイズという映画をこしらえて、最後にニュー・ローズを演奏したら物凄く感動的でしょう。当時の熱気を知らないと、CDだけではちょっと厳しいかもしれません。

 ということをレコード会社が考えたのか知りませんけれども、紙ジャケ再発にあたっては、発表当時のライナーがそのまま掲載されています。ライターはミッキー森脇さん、パンクといえばミッキーかケンショーでした。このライナーがとにかく熱い。熱い。熱い。

 「夜中の2時、3時に起きて、『ニュー・ローズ』だけをそれこそ1時間ほど聞いたこ とは一度や二度ではない」。すごい熱気です。この熱気とともに味わってこそ、ダムドの魅力が伝わるというものです。

 とはいえ、このデビュー作はパンク幻想を抜きにしてもなかなかの快作です。ブライアン・ジェームズの書く曲はキャッチーですし、定評あるラット・スキャビーズのドラムも決まっています。ニック・ロウのプロデュースによって勢いを真空パックされた名盤だと思います。

Damned Damned Damned / The Damned (1977 Stiff)