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演目は、ヴェルディの「エルナーニ」、「オテロ」、「イル・トロヴァトーレ」から1曲ずつ、ベッリーニの「ノルマ」から2曲と「テンダのベアトリーチェ」から1曲、ポンキエルリの「ジョコンダ」から2曲の計8曲です。
とはいえ、これはCD1枚に編集された抜粋盤で、完全盤はCD2枚の長尺です。何やら2時間半もあるとのことで、よくもまあ2時間半も歌えるものです。さすがに鍛えられた歌手は違います。カラオケで2時間半歌ったとしたらどうなるか考えてもみて下さい。
企画としては、まずはサザーランドが選ばれたものと思われますので、彼女の持ち込み企画なのかもしれません。マリリン・ホーンはサザーランドの相手役として一気にブレイクした女性のようですし、演奏はサザーランドの夫であるリチャード・ボニングです。
パヴァロッティはサザーランド夫妻によって見いだされたとも言われるくらいですから、サザーランドには頭が上がらないことでしょう。喜んで参加したのでしょうけれども、気が進まなかったとしても断る選択肢はなかったと思われます。
この時、サザーランドは54歳、ホーンは48歳、パヴァロッティは45歳です。この年齢ですと、必ずしも全盛期とは言い難いでしょう。ですから、ここは功成り名を遂げた大歌手たちの円熟の技を聴かせるという企画なのでしょう。
一緒に録音されている拍手の大きいこと大きいこと。最後のアンコールを求める場面では、低い悲鳴のような声とともに、地響きがするかと思われるほど床を踏み鳴らしています。ロック・ファンよりも凄いことです。大人が本気をだすと恐ろしいということが分かります。
ついでに、サザーランドを毛嫌いしている日本の評論家の方がいらっしゃるらしく、このコンサートのことを「聴かなくて幸せだった」とまで酷評しているのだそうです。ここもロックやジャズの評論家に比べれば大人げない。クラシック界というのは面白いところです。
さて、肝心の歌の方はどうかと言いますと、大きな拍手に煽られて、聴いている側も盛り上がります。四の五の言わずに、大御所が気持ち良く歌っているというだけで、良しとしようという空気まで伝わってくるようです。
単独で歌うアリアはなくて、どの曲も二人ないし三人、「お母さん、眠らないの」だけはジェイク・ガードナーという方がバリトンで参加しています。要するにセッションです。せっかく大物を集めたのだから、単独でというよりも一緒に歌ってもらう。最近の歌番組の傾向です。
ジャケット写真の楽しそうな三人の顔を見ていると、このアルバムの素晴らしさが良く分かるというものです。オペラ歌手の皆さんは大仕掛けの舞台が本職でしょうが、こうしたファン感謝企画もなかなか乙なものです。
Live From Lincoln Center / Joan Sutherland, Marilyn Horne & Luciano Pavarotti (1981 Decca)