あけましておめでとうございます。今年も何とか続けていきますので、どうぞよろしくお願いします。

 お正月になりますと、気分も新たに新年の誓いなどを立ててみたりいたします。今年はどんな年になるのか、そんなことを考えていると、世界の平和に思いを馳せたりもするものです。少なくとも普通の時よりも気分が壮大になってきます。

 そんな気分にベートーヴェンの第九はぴったりです。日本ではすっかり年末の風物詩になってしまいましたが、人類愛を正面から歌い上げるこの壮大なシンフォニーは気分が大きくなった正月にこそ聴かれるべきでしょう。

 何でも、第九が年末に演奏されることになったきっかけは、赤字に悩むオーケストラが合唱も含めて大人数で演奏する第九ならば、演奏者の家族だけでも結構な客の数になるだろうと考えたことからだとテレビでやっていました。

 もしそうだとすると、正月は難しいです。昔は正月にそうした歌舞音曲の類はご法度でした。正月は家族で静かに過ごすもので、お店はすべて休みというのが正月の光景でした。そうなると観客どころか演奏者も集まらない。 

 しかし、そうしたタブーが緩くなった今ならば大丈夫ではないでしょうか。ニュー・イヤー・コンサートで第九を演奏し、見に来た観客は大いに盛り上がってみんな壮大な新年の誓いを立てる。ほとんどの人が後悔しそうですが、世界平和に少しは貢献することでしょう。

 この作品は新年に相応しい第九です。さほどシリアスではなく、流れるようなゴージャスな第九です。あまり軽すぎるとよろしくありませんが、さすがにカラヤン指揮ベルリン・フィルの演奏は素敵です。重すぎもせず、軽すぎもせず。大変聴きやすい。

 カラヤンは、1962年から、ドイツ・グラモフォンにて、ベートーヴェンの九つの交響曲をベルリン・フィルと初めてステレオで録音します。これはそのうちの一つで1963年に発表されたものです。第九の代表作に入ることはありませんが、結構人気のある作品のようです。

 クラシック音楽通の間ではいざ知らず、私の若い頃、一般に最も知名度の高い指揮者はカラヤンでした。その演奏を聴いたことがなくても、カラヤンの名前は誰でも知っていました。レコード売上1億枚と言われるだけのことはあります。

 そのカラヤンが、これまた作曲家の中でも最も有名なベートーヴェンの、しかも知名度では「運命」と双璧をなす第九を振っているわけですから、人気がないはずがない。それに演奏自体が派手です。私のような初心者向きです。

 第九はもちろん最後の第四楽章が最も有名なわけですが、その他の楽章もそれはそれで有名です。聴いたことのあるフレーズが結構多く出てきて、ああこれは第九だったのかと思いながら聴いているとあっという間に時が立っていきます。

 カラヤン盤をCDで聴いている分には、新年の誓いもさほど壮大なものにならずに済みそうです。人類全般に愛を広げるのではなく、まずは身近なところから俗っぽく頑張ってみようかなという気になってきました。

Beethoven : IX. Symphonie / Herbert Von Karajan, Berliner Philharmoniker (1963 Deutsche Grammophon)