小粋なジャケットに包まれたカールトン&ザ・シューズの第二作目です。いかにも伊達男ですけれども、これが1981年の作品だとは思えません。もっと昔の雰囲気です。1950年代くらいでしょうか。そこらあたりのミスマッチ感が何ともいえず素敵です。

 カールトン&ザ・シューズは、もともとカールトン&ザ・シェイズという名前だったにも関わらず、デビュー・シングルにシューズと書かれてしまいました。明らかに誤植ですけれども、カールトン・マニングはそのままバンド名に採用してしまいました。楽しい人です。

 バンドはもともとカールトンを含む三兄弟のボーカル・ハーモニーを売りにしたバンドでした。しかし、カールトン以外の二人はアビシニアンズというバンドを結成し、カールトンは一人でシューズの活動を続けることとなりました。

 結果、この2枚目のアルバムは実質カールトンのソロ・アルバムです。肝心のボーカルは彼による多重録音です。優しいカールトンのボーカルがこのアルバムを唯一無二のものにしています。このボーカルは素晴らしいです。

 音楽スタイルはロック・ステディーと言ってよいのでしょうか。レゲエ前期のジャマイカン・ミュージックです。ただし、ロック・ステディーは1960年代後半の音楽です。カールトンはその頃から活躍していますので、おかしくはないのですが、このアルバムは1981年です。

 1981年と言えばボブ・マーリーが亡くなった年です。レゲエはすでに世界的にその地歩を確立していました。その戦闘的なレゲエ・サウンドに比べれば、カールトン&ザ・シューズの奏でるレゲエは大そう心地よいです。年季の入ったレゲエと言えるでしょう。

 しかし、サウンドも凄いです。特にリズム・セクションは素晴らしい。ボブ・マーリーのバックを務めていたバレット兄弟が担当しています。ぶっといベースにからからのドラムが凄いです。野太いという表現がぴったりする見事なリズムです。

 他にもアール・チナ・スミスやパブロ・ブラック、ヘッドリー・ベネットといったミュージシャンは、当時隆盛を極めていたルーツ・ロック・レゲエの有名ミュージシャンだということで、カールトンおじさんのもとにジャマイカの有名どころが勢ぞろいしたという佇まいです。

 ところが、この作品は当時わずか500枚から1000枚くらいしかプレスされなかったらしく、長い間その存在が知られていなかったようです。10数年の時を経て、レコードを漁る熱心なリスナーに再発見されて、こうして今は名盤扱いされているわけです。

 アルバムは名曲揃いです。野太いリズムと甘美なコーラスの融合はどんな曲でも名曲にしてしまう魔力をもっています。中でもクレモンティーヌがカバーした「ギヴ・ミー・リトル・モア」は90年代にクラブでへヴィー・プレイされていたという名曲です。

 ウィキペディアの紹介では、カールトンはジャマイカと日本で人気があると書いてありました。何度か来日して公演している彼のことですから、その紹介に間違いはないのでしょう。日本人の心をくすぐるのはやはり美しいコーラスでしょう。心の底からほっとするアルバムです。

This Heart Of Mine / Carlton & The Shoes (1981 Quality)