「ヒット曲満載」を祈念して、「ローデッド」と付けられたアルバムです。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドは移籍したレーベルから、ヒット曲を出すように要求されました。それに応えて制作されたアルバムがこちらです。

 「自分たちはただのロング・アイランドのロックン・ロール・バンドだ」と言い募るのはルー・リードです。ルーはしばしばこういう言い方をして、自らの原点を確認します。ロックン・ロールは大衆音楽ですから、ヒット狙いは原点回帰と軌を一にするものだと思います。

 ともあれ、できるだけ奇妙に聞こえるようにアレンジすることを目指していたヴェルヴェッツはここではできるだけ多くの人の耳を打つようなキャッチーなアレンジに宗旨替えしています。名曲「スウィート・ジェーン」も「ロックン・ロール」もとてもラジオ向きなエディットです。

 ヒットのポテンシャルも高かったと思うのですが、不幸にしてそうはならず、これを最後にルー・リードが脱退しています。残されたダグ・ユールを中心にバンドはしばらく存続しますが、やはり長続きはしませんでした。

 ところで私は彼らの作品の中でこれを最初に聴きました。漆黒の闇に蠢く滅びのバンド的なイメージで頭がぱんぱんでしたから、クエスチョン・マークが100個ほど飛び交いましたが、彼らの作品を知れば知るほど、これはこれでヴェルヴェッツじゃわいと思うようになりました。

 裏ジャケットにはピアノに向かうダグ・ユールの姿のみ。ダグはマルチ・インストゥルメンタリストとしてベースやギター、時にドラムまで演奏する活躍ぶり。もちろんボーカルもばっちりとっています。

 反対に当時妊娠中だったというモーリン・タッカーはクレジットこそあれ、実際には演奏に参加していない模様です。道理でドラムスが当たり前すぎます。ついでにスターリング・モリソンも試験やら何やらでややこしいことになっていて、あまり参加していない様子です。

 ルー・リードは全曲の作者ですけれども、アルバムの完成を待たずに脱退しており、仕上がり品に満足していない。これだけ聴くと、なんとも不幸なアルバムのような気になりますが、意外とこの作品はしぶといです。

 この2015年リマスター盤には後にパティ・スミス・グループで活躍するレニー・ケイの評論家時代のレビューが掲載されています。「バンドの変化について最も驚くべきことは実際には何も変わっていないことだ」とは彼の弁です。

 ジョン・ケイルはすでにいなくなっていましたし、タッカーもモリソンも不在がちですけれども、彼らの存在を感じることができます。名曲「ニュー・エイジ」のドラムはモーリンじゃないとすれば、その幽霊でしょう。

 いろいろな顔を持つヴェルヴェット・アンダーグラウンドのトップ40的作品として、根強い人気を誇るアルバムは、彼らの最後のスタジオ作品らしく、ボロボロになりながらも、芯の通ったロックン・ロール・アルバムです。

Loaded / The Velvet Underground (1970 Cotillion)