「スーパーヒーロー」は受験の応援ソングなんだそうです。作詞はYuReeNa、「長野の大自然が育んだ歌声で、幸せを運ぶシンガーソングライター」で、NHKのど自慢をきっかけに歌の世界に入った女性です。

 なるほどそう思って聴くとそうです。「受験生はいまみんな戦っているから、聴いて勇気づけられてほしいなって思います」と最年少の中山莉子が言っています。テーマからして感動的な楽曲です。

 こういう曲は王道Jポップなので、これまでのエビ中らしくはありません。AKBやハロプロが歌ってもおかしくない。小林歌穂のお母さんも「エビ中ちゃんを知らない人にも聴いてほしい」と言っているそうですから、メンバーやスタッフも自覚していることでしょう。

 今回、問題はカップリング曲です。この商法は何とかならんもんでしょうか。あまり気にせずに初回生産限定盤Bを買ってみたのですが、限定盤Aと通常盤と三種類あって、それぞれカップリング曲が違うことに後から気が付きました。慣れていないもので。

 私の限定盤Bは「キラキラネスキラネス」という曲で、エビ中の元レーベル・メイトの後藤まりこが書いた曲です。彼女は作家活動を一時停止していましたが、これが復帰作になります。アレンジは舞台や演劇への音楽提供などでも知られる オオルタイチという人です。

 この曲は何とも可愛らしい曲で「斜め45度上を見て歌うと言うか。ボーッとしながら、自分の頭の中の夢に入った気分で歌っちゃうみたいな」歌い方をしたそうです。「メリーゴーランドみたいだよね」「小さい星がいっぱい流れている感じ」。

 最年少の中山莉子の中学生っぽいボーカルが良く似合うエビ中のイメージを見事に生かした曲で、「かわいいだけじゃなくてリアルさもあるから好きなんだなって思います」という等身大の曲です。しみじみといい曲だなと思います。

 限定盤Aはエビ中の別名ユニット五五七二三二〇によるセカンド・シングル「ポンパラ ペコルナ パピヨッタ」でした。もはや大御所となった菅野よう子による楽曲で、8人の合唱を最大限に生かしたプログレな楽曲です。

 ライブで再現できるかと聞かれて、全員で「いやいやいや!」と言ってるくらいの難曲です。ヨーロッパ、それもイタリアのプログレを彷彿させる奇妙な楽曲で、スタッフの冒険心が凄いです。エビ中ならではと言えるでしょう。

 通常盤は「こりゃめでてぇな」。「金八」の流れを汲んで、今度は紅白歌合戦に出て「こりゃめでてぇな」という趣旨です。これはこれではっちゃけた曲ですが、残念ながら2015年の紅白は出られませんでした。もう少し早く出すべきでした。

 何だかもはや凄いことになっています。学芸会だけに何でもあり。少々無謀でもやってしまおうという精神がいいです。聴き手の寛大さに甘えまくるという新しい生き方。もはやこれは確立された芸です。

参照:CDJ2015年12月号 南波一海

Super Hero / Ebichu (2015 SME)