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ロック・バンドのプロデューサーをやってみたかったからという理由でアンディ・ウォーホールがプロデュースした作品ですが、原盤はおなじみトム・ウィルソンに売られ、トムがニコの個性を引き立たせるために「日曜の朝」を追加で録音してアルバムに仕上げたのだそうです。
強烈なジャケットに包まれた伝説のアルバムにふさわしくないエピソードですが、初めて聴いた時に、サウンドの方も「ゆるい」と感じた人は多いのではないでしょうか。間章氏いわく「廃墟と亡びのアナーキスト」の作品として妄想がいや増しに膨らんでいましたから。
このレコードは語られつくした感があります。キーワードは、衝撃、頽廃、絶望、虚無、倒錯、狂気などなど。しかし、私としては、バンドのドラマー、モーリン・タッカーの「私たちはフォーク・バンドだ。」と言う言葉が一番気になっています。
なるほどそうです。ロック界のレジェンド、ルー・リードとジョン・ケイルという二人の大きな才能を前にして、なかなか思いつきませんが、言われてみれば、なるほどこれはフォーク・ソングです。そう思って耳を傾けると、このアルバムがすんなり腑に落ちます。
彼らの場合、大たいルー・リードが曲を書いてきて、それをできるだけ変に聴こえるようにアレンジしたそうで、そこには小嶋さちほさん曰く、「かっこいいものをつくりたいという強烈な意思」が感じられます。そこが彼らを他のバンドから隔てているところでしょう。
ヴェルヴェッツは、前述の三人にギターとベースのスターリング・モリソンを加えた四人組でしたが、アンディー・ウォーホールのたっての願いで歌姫ニコを加えてこのデビュー作を作り上げました。
まるで生活感の感じられないニコのボーカルは、バンド自体よりもさらに深い奈落を感じさせます。バンドは共演を嫌がったそうですが、コラボは正解だったと思います。フォーク然としたバラード曲もニコの声が入るとあの世の歌のようです。
バンドのサウンドでは、ジョン・ケイルのヴィオラを始めとする前衛的な側面が魅力ですが、一番変なのはモーリン・タッカーのドラムです。ルーズなドラミングはバンド・サウンドの揺らぎをもたらして唯一無比です。
本作品には、問題作にして代表曲そのものずばり「ヘロイン」や、ヤクの売人を歌ったと言われる「僕は待ち人」、SMのザッヘル・マゾッホ「毛皮のヴィーナス」などのハードコアに対し、「日曜の朝」「宿命の女」「アイル・ビー・ユア・ミラー」の三大バラードが収録されています。
さらにアヴァンギャルド全開な「黒い天使の死の歌」に「ヨーロピアン・サン」を加えて、全曲捨て曲なしです。強烈な個性をもったバンドによる世紀のデビュー作は緩さと緊張感のブレンドが何とも言えない名作です。
The Velvet Underground & Nico / The Velvet Underground & Nico (1967 Verve)