煙草を挟んだ手がやけに大きく見える、フェラの熱唱姿を使ったジャケットです。裏ジャケットはこの全身像が3枚並べられています。足さばきがやけにかっこいいです。ジェイムズ・ブラウンを思わせますが、二人のリズム感が違うことが足で分かります。

 このアルバムは、もとは「ミュージック・オブ・フェラ」と題されて、2枚に分けて発表された作品を一つにして、さらにシングル曲2曲を加えたものだということです。ただし、ブックレットにはそう書いてあるものの、二つに分けたかどうかはよく分かりません。

 4曲で2枚のLPですから、レコードの片面に1曲ずつ、いつものフェラの調子です。それにやや短いシングル曲が2曲含まれています。短いとはいえ、2曲とも10分程度はあります。フェラの世界は5分程度では描けないのでしょう。

 タイトル曲「ロフォロフォ・ファイト」と、続く「ゴー・スロウ」は特に人気が高い楽曲です。いずれも今でもクラブでかかるそうで、フェラの最高傑作にこの作品を推す人が多いというのも、それで納得がいきます。

 どちらの曲も派手に分厚いサックスが活躍します。中心になっているのはバリトン・サックスの野太い音です。編成は、フェラを加えてサックスが3本にトランペットが1本のようです。ねっとりとしたサックスの音色が体にまとわりついてきます。

 前面に押し出されている管楽器の音を支えているのが、テナー・ギターとリズム・ギターの催眠的なリズムです。細かく刻むリズム・ギターとそれに応じるテナー・ギターによるフレーズが延々と反復されて、魔術的な感覚を生み出しています。

 「トラブル・スリープ・ヤンガ・ウェイク・アム」は、解説によると、「火遊び」と言った意味だそうで、ミスター・トラブルは挑発されるまでは大人しくしている、ということを歌っています。フェラの聴衆である抑圧された人々に心を寄せた歌です。

 この歌はフェラには珍しいバラードです。ゆったりとしたテンポで演奏がなされており、もの悲しいメロディーがその上をのたうっていきます。「アフロビート・ブルース・バラード」とは解説のクリス・メイによる命名です。

 このアルバムではフェラのボーカルが際立っています。歌いまくるというほどボーカル・パートが多いわけではありませんが、要所要所で出てくる声がとてもしなやかで力強い。落ち着いたパワーを感じさせます。

 バラードでの深い声や力強いスキャットなどは新たな発見です。また、「アリヤ」でのトニー・アレンのドラムとフェラのボーカルの掛け合いも楽しいです。ボイス・パーカションとも言えるボーカルが面白いんです。

 「アリヤ」と「シェンシェマ」という追加2曲のシングルは少し本体とは感覚が違いますけれども、それが返っていいアクセントにもなっています。「シェンシェマ」の前に出てきているパーカッションなどは鳥肌ものです。

Music Of Fela - Roforofo Fight / Fela Ransome Kuti & Africa 70 (1972 Jofabro)