「リメインズ」はオンリー・ワンズの未発表曲集です。フランスのクローサー・レコードから発売されており、当初はフランス盤しか出ていませんでした。それもLPと付録のシングル盤という構成です。このCDは同じクローサーからのもので付録も収録されています。

 この他にアナグラム・レーベルから1993年に同名のアルバムが出ていますが、これは少し曲が違います。オンリー・ワンズの未発表曲集はこれしかありませんが、こうして若干の混乱が生じています。

 未発表曲集ではありますが、私は発表当時から愛聴していました。ことによると3枚のスタジオ作品よりもまとまりがあるのではないかと思わせる充実ぶりです。何とか売れなければいけないという縛りが薄いからではないでしょうか。

 収録されている曲の中には、オンリー・ワンズ結成以前の曲も含まれています。ジョン・ペリーがギターを弾いていない楽曲が3曲あり、それが該当すると思われます。もともとジョンはベーシストであり、それらの曲ではベースを担当しています。

 それではギターは誰かというと、スクイーズのグレン・ティルブルックです。彼のギター・スタイルはジョンとはやはり違っています。より骨太なギターですが、これがまたいい味を出しています。特に五曲目の「マイ・リジェクション」での活躍は素晴らしい。

 さらにアルバムのベスト・チューンではないかと思っている「ワッチ・ユー・ドラウン」のぽわぽわしたギターも素敵です。ピーターの眠そうなボーカルが引き立つ名曲です。彼の世界観をよく表している秀作です。

 それ以外の曲は、「ベイビーズ・ガット・ア・ガン」のセッションからのものが中心のようですが、コリン・サーストンのプロデュースではありません。これもまた充実しており、コリンのプロデュースで失われたバンドの味わいの一部が良く分かります。

 名カメラマンであるフィン・コステロによるカバー写真はピーター・ペレットとオンリー・ワンズの楽曲の世界をとても良く表現しています。気怠く、眠そうなボーカルが描き出す心の襞が薄暮の世界に広がっていく。何とも元気を奪う音楽です。

 ピーター・ペレットはジョニー・サンダースにまで「あいつはひどい」と言わしめたジャンキーで、売人稼業にも手を染め、キース・リチャーズも顧客にしていたと言われています。所詮は噂ですが、音楽を聴いていると、それも首肯しうるから始末が悪いです。

 結局、三枚目のアルバム発表後に解散してしまいますが、後に再結成して二度も来日しています。ひどい目にあったはずなのに、幼馴染でもないバンド・メンバーが揃うとは稀有なことです。私生活はどうあれ、音楽的には充実していたのでしょう。

 しかし、バンド結成以前のグレンとのセッション楽曲はどれも素晴らしい。これで1枚作っていれば、また彼らの伝説に色を添えたのにと思われるのが残念です。裏のロック史を彩る素晴らしいバンドであるだけに、もっと音源を発掘してもらいたいものです。

Remains / The Only Ones (1984 Closer)