オンリー・ワンズはカルトな人気があります。決して一般的な知名度があるわけではありませんが、なぜかその作品は廃盤になったことがないのだそうです。入手困難となるアーティストが多い中で不思議なことです。

 これが彼らのデビュー作で、発表は1978年4月です。パンク/ニュー・ウェイブ時代でしたから、新しいバンドはプログレやヘビメタでない限り、パンク/ニュー・ウェイブに分類されたものです。

 しかし、彼らのサウンドは当時のイギリスのパンク/ニュー・ウェイブとは随分違っていました。ギターを中心に据えたそのサウンドは早すぎたギター・バンドでもあり、遅れてきたシド・バレットでもありました。

 それにメンバーが結構ベテランでした。ドラムのマイク・ケリーは60年代の英国ロック・バンド、スプーキー・トゥースにいましたし、ベースのアラン・メアーもセッションで鳴らしていました。そのリズム・セクションを従えていたのが、我らがヒーロー、ピーター・ペレットです。

 ルー・リードやジョニー・サンダースなどのニューヨーク勢の雰囲気を色濃くもち、さらにシド・バレットのサイケ感覚を併せ持った稀有なボーカリストであり、ソングライターであるピーターの魅力がバンドの魅力だと言っても過言ではありません。

 そのピーターとギターのジョン・ペリーが中心となって1976年に結成されたオンリー・ワンズは自主制作で注目を集め、CBSと契約を交わすと、いきなり「アナザー・ガール・アナザー・プラネット」で成功します。

 この曲はチャート・アクションこそ派手ではありませんでしたが、ロンドン・パンクのコンピにはしばしば顔を出すパンク/ニュー・ウェイブを代表する名曲です。結局、オンリー・ワンズの楽曲の中で最も有名な作品となっています。

 何度もリバイバルされていて、92年には英国でチャート・インしています。ギターがソロをとるところが当時の状況からすると十分異端だったのですが、キャッチーなメロディーとしっかりしたリズム・セクションにヘロヘロなボーカルが乗る、確かにいい曲でした。

 そんなシングルを擁するデビュー作がこちらです。バンド名をタイトルにしたシンプル極まりないアルバムで、しばしば彼らの最高傑作と言われるアルバムです。比較的ゆったりとしたギターが活躍するのですが、結構パンク的な楽曲も多いので、人気も分かります。

 楽曲はすべてピーターの手になります。短めの曲が多く、全10曲で30分強なところは、とてもパンク的です。しかし、今聴くとパンクだと思う人は少ないでしょう。60年代のポップな意匠を伴ったギター・ロックですから。

 ピーター・ペレットは60年代的なニュー・アンチ・ヒーローでした。大いに人気があったというわけでは決してありませんが、じわじわと迫ってくる不思議な魅力は彼をカルト・ヒーローに仕立て上げました。何とも素晴らしいバンドでした。

The Only Ones / The Only Ones (1978 Columbia)