この頃はまだシングル曲主体の時代でした。アルバム単位で聴かれるようになるのは、もう少し先のことです。ですから、アルバム毎にテーマがはっきりとしているわけでもなく、曲の寄せ集め的な作品が多いです。

 特にモータウンはそういう感じが強く、1960年代のモータウンのサウンドは、今から聞こうとするならばベスト・アルバムが一番良いと思います。日本で言えば、昔の歌謡曲が大たいそんな感じでした。歌謡界はその上に作品数がやたらと多かったですし。

 しかし、ミラクルズのこのアルバムは大ヒットした前作の「ゴーイング・トゥ・ア・ゴーゴー」から1年ぶりに発売されています。意外と時間が経っているなというのが正直な感想です。ただし、そのわりにはタイトルが柳の下の泥鰌狙いを隠そうともしていません。

 この頃のスモーキー・ロビンソンはまだまだ脂が乗っていた時期ですが、この作品ではカバー曲が目立ちます。まず、シングル・ヒットした「ホール・ロット・オブ・シェイキン・イン・マイ・ハート」はフランク・ウィルソン作の広く親しまれている曲です。

 さらにホーランド・ドジャー・ホーランド作の「アイム・ザ・ワン・ユー・ニード」もヒットしました。また、一際アルバム中で耳を弾くのは、ダスティー・スプリングスフィールドが初出となるエルビスの大ヒット「この胸のときめきを」です。

 他にも作者陣にバート・バカラックや、当時まだ16歳のスティーヴィー・ワンダーの名前も見えます。特にバート・バカラックとハル・デヴィッドのコンビの曲は2曲も収められています。とてもバカラックらしい曲です。

 このように、多彩な作家陣の歌を実に気持ちよさそうにスモーキー・ロビンソンが歌うというアルバムです。ソングライターとしてよりも、ボーカリストとしてのスモーキーを堪能するアルバムというところが狙いなのでしょう。

 しかし、こうなってくるとミラクルズは必要なのかという疑問もわいてきます。前作からスモーキー・ロビンソン&ミラクルズに改名していますが、この作品でより一層スモーキーとバック・バンド色が濃くなりました。ジャケットもスモーキーの独り勝ちです。

 残念ながら、前作の大ヒットを繰り返すことはできませんでしたが、全米チャート41位を記録していますから、まずまずのヒットだと言えるのでしょう。目立ったヒットがない中でこの数字は立派です。

 残念ながら、目立つ曲がカバー曲ばかりということで、あまり人口に膾炙することがない作品です。しかし、タイトルがタイトルだけに今では「ゴーイング・トゥ・ア・ゴーゴー」とのカップリングCDが定番になっています。タイトルを考えておくものです。

 決して派手でもなく、傑出したアルバムではありませんが、この頃のモータウンの実力はこういうアルバムにこそ現れます。そこそこの曲をそこそこに歌っても、歌唱のみならず、その演奏も含めて、じわじわとするめのように味わい深い。凄いことです。

Away We A Go-Go / Smokey Robinson & Miracles (1966 Motown)