「21世紀の期待の星」が纐纈雅代さんです。私は新宿ピットインで秘宝感のライブを見た際に、彼女がサックスを吹く姿にいたく感動いたしました。さっそくブログの読者になりました。大きな病気をされたので心配していましたが、こうして元気にアルバムがでました。

 バンド・オブ・エデンは纐纈雅代さんが率いるバンドで、ギターに内橋和久、ベースに伊藤啓太、ドラムに外山明のカルテットです。本作品では秘宝感仲間のスガダイローがピアノでゲストとして参加しています。

 2015年3月に新宿ピットインで行われたライブを録音した作品で、オーバーダブは1曲のみ、あとはすべて一発録りです。しかし、録音技術は進歩しました。「瞬間冷凍即日編集!」された音は素晴らしいの一語です。

 秘宝感でのライブは結構パンクな感じだったので、本作品もばりばり吹きまくるどばしゃば系かと想像していましたが、それに近いのは「ヤドナシ・ブルース」一曲だけでした。全体は、「楽園のグルーブ、三丁目の宇宙」のコピーが似合うサウンドです。

 ジャケットの絵は纐纈さん自身の作品です。サウンドはこの絵のまんまの雰囲気をまとっています。色使いが中南米やネイティヴ・アメリカンを思わせ、大地や宇宙との交感をひしひしと感じさせてくれる味のある絵です。

 ツイッターによれば、三輪山の絵も素材として用意されていたそうですが、そちらの絵も「自然崇拝してきた古代人の想い。大切にしたい。」とのことで、古代に範をとった自然と人間の同化がモチーフになっているのではないかと思います。

 楽曲のタイトルも、古代エジプトの太陽神「ラーの大船」、同じくエジプトの死者の書に出てくる祝福された来世の「イアルの野」、日本からは「卑弥呼」、時代は下りますがカンボジアの「アンコール・ワット」と、キーワードがてんこ盛りです。

 ご本人は「このアルバムの曲の世界は、どれも架空の世界の物語なんです」と語っています。こうしたキーワードを元に物語を紡いでいるのでしょう。「イメージが湧くと、それを具体的に音にしたい」と、即興ではなく、しっかりと事前に考えられているサウンドです。

 一曲一曲が考え抜かれた独自の世界を展開しているのですが、最後の曲だけは全員で即興した曲です。さすがに一夜のライブだけあって、この全員即興はアルバムの全体像にぴったりとマッチしています。とてもプリミティブな感覚です。
 
 纐纈さんはムビラや、ポケットサイズのシンセサイザーであるカオシレイターも使っていますし、内橋さんはダクソフォンなる楽器も使っています。そんな楽器も使いつつ、サックスやギターのサウンドがわらべ歌的に展開する不思議な世界です。

 このアルバムは新たに立ち上げたご自身のレーベルから発表されており、それも「驚異的なスピードでのクラウドファンディングを得て」制作されているそうです。私も参加したかった。次の作品も大いに期待できそうですから、乗り遅れないようにしないと。

参照:CDJ2015/9 青木和富

Band Of Eden / Band Of Eden (2015 Suisui)

残念ながら音源は見つからず。悪しからず。