2006年の松浦亜弥は、藤本美貴とGAMを結成したり、「スケバン刑事」で4代目麻宮サキに就任したりとまだまだアイドル全盛期でした。音楽活動もユニット中心に活躍していて、しっかり紅白歌合戦にも出場しています。

 このアルバムは、そんな時期に発表されたにも係わらず、およそアイドルらしくありません。ジャケットからして、多くのファンが、「このジャケットはないわぁ」と思ったものです。そもそも顔が怖くないですか?

 この作品は、松浦亜弥のセルフ・カバーを中心としたボーカル・アルバムです。全部で12曲入っていますが、そのうちセルフ・カバーが7曲、洋楽カバーが3曲、新曲が2曲という構成です。前作からこれまでのシングル曲は一曲しか収録されていません。

 セルフ・カバーも偏っていて、アルバム収録曲は4曲のみ、いずれもデビュー作からの選曲です。そして、洋楽カバー2曲と新曲2曲以外は、スタジオでのライブ収録と思われます。そして、付属DVDには全10曲のスタジオ・ライブ映像が収録されています。

 CDとのだぶりは6曲、残り4曲はすべてセルフ・カバーです。スタジオ・ライブはハロプロの名アレンジャーの鈴木俊介が編曲を担当していて、プロデュースはつんく♂ではなく同じシャ乱Qのたいせいとなっています。

 つまり、つんく♂のもとを離れた初のアルバムということになります。そして、これまでの何でもありのアレンジではなく、バンドとのライブ感を重視したオーソドックスな編曲になっています。もはやアイドルではなく、ボーカリストのアルバム作りです。

 洋楽カバーもベン・シドランだったり、ノラ・ジョーンズだったりと渋い選曲です。新曲もバラードが二曲、EXILEや浜崎あゆみに曲を提供している中野雄太の「ひとり」と、ジャニーズなども手掛ける成海カズトの「dearest」です。

 後者は藤本美貴の結婚式であややが歌った曲で、結婚式に相応しい歌詞の名曲です。月並みな歌詞ですし曲ですけれども、こういう時には月並みの方が心に沁みるものです。いい歌ですから、もっと結婚式で流行ってもよさそうです。

 バンド演奏による楽曲だけにしてもよかったと思いますが、そこまでは冒険できなかったので、新曲も入れましたというところでしょう。あややがまだアイドルとして旬だった頃ですから、スタッフの気持ちも分かります。

 ばりばりのアイドル・ソングもバンド演奏によって再解釈されてみると、つんく♂のメロディー作りのセンスの良さが際立ってきます。そして松浦亜弥の歌唱力もアイドルの域を超えています。しかし、派手さがない。アイドルを期待していた多くのファンは戸惑ったことでしょう。

 バンド演奏のアレンジはなかなか力が入っています。落ち着いた深みのある演奏になっていて、ライブ・ハウスで良質のフュージョンを聴いているような気になります。こういう演奏と一緒に歌う松浦亜弥は本当に楽しそうです。DVDでの笑顔がいいです。

Naked Songs / Matsuura Aya (2006 Zetima)