サルソウルは1974年にケイル兄弟によって設立されたレコード・レーベルで、初期のディスコ・ミュージックに影響を受け、ダンス音楽専門のレーベルとして活動しました。そこにラテンの要素が係わって、サルサとソウルでサルソウルです。

 このレーベルは初めて12インチ・シングルを発表したことでも知られています。活動期間は約10年でしたが、のちに彼らは世界最初のクラブ・ミュージックのレーベルとして、その音楽が見直され、1992年には装いも新たに復活しました。

 サルソウル・オーケストラはサルソウル・レーベルの看板楽団で、同名義でも作品を発表する他、ハウス・バンドとしてレーベルから発表された音源のサウンドを数多く担当しています。彼らの作り出す音が同レーベルの顔となっています。

 オーケストラは40名を越える大所帯で、その中心はヴィンス・モンタナ・ジュニアです。彼はフィラデルフィアのシグマ・サウンドのスタジオ・オーケストラだったMFSBで名物アレンジャーとして知られていました。

 その彼がMFSBの一部メンバーを引き連れて、やって来たのがサルソウルです。したがって、そのサウンドはフィラデルフィア・ソウルが基盤にあり、そこに新レーベルの特徴でもあるラテン・グルーヴが融合したものと理解しておけば概ね間違いではありません。

 この作品はヴィンスを中心とするサルソウル・オーケストラの4作目となるアルバムです。選曲にあたっては、できるだけ幅広いものにしたいと考えたそうで、「参加ミュージシャンの才能と閃き、そして自信に裏付けられたもの」となったとのことです。

 その自信は、「同時代のロックンロールから歴史に残る偉大なメロディーまで幅広い音楽に必要なサウンドとニュアンスを提供できる」という自信です。ジャケットに記すだけあって、確かに自信が漲っています。

 その言葉に違わず、タモリ倶楽部のオープニングで有名なロイヤル・ティーンズのオールディーズ「ショート・ショーツ」、アース・ウィンド&ファイヤーの「ゲッタウェイ」、キューバ生まれの名曲「グアンタナメラ」など幅広い選曲です。

 さらに、驚きはストラヴィンスキーの「火の鳥」をアレンジした「マジック・バード・オブ・ファイヤー」やモントリオール・オリンピックのテーマ曲です。こんな意表をついた楽曲でも、ディスコなら何でも吸収できます。

 しかし、何と言っても話題は「ランナウェイ」です。ニューヨリカン・ソウルが1996年にカバーして各国のクラブ・シーンで大ヒットした曲です。ボーカルはレーベルの人気シンガー、ロレッタ・ハロウェイで、ヴィンスのヴァイヴが凄い曲です。

 確かにディスコに留まらないサウンドです。ディスコ・サウンドはやがてハウスになっていくわけですが、このサウンドはかなりハウス寄りです。クラブ・ミュージックの誕生に限りなく近い位置にあるサウンドだと思います。

Magic Journey / The Salsoul Orchestra (1977 Salsoul)