ジャケットを見ただけでヘビー・メタルと分かると思います。しかも北欧っぽい。トカゲだか魚竜だか得体のしれない生き物にまたがっているのはいかにも北欧のマッチョマンです。とても分かりやすい絵柄です。

 ビスカヤはスウェーデンのヘビメタ・バンドです。アルバムは1983年に発表したこのデビュー作のみで、この後に出した12インチ・シングルが最後の作品になりました。そのシングルに収められた4曲はCD化に際してボーナス・トラックとして収録されています。

 したがって、このCDで彼らの全音源を網羅していることになります。LPは北欧ハード・ロック・ファンには「不朽の名作として今尚語り続けられている」そうです。そこで、CDでの再発がなったわけで、これで一般の人にも手に入るようになりました。

 もちろん大したヒットにはなっていませんし、北欧ヘビメタ・ファン以外の人にはほとんど知られていないと思いますが、半年遅れとは言え、当時日本盤も出ています。それにネットで検索してみると、思いのほか、多くの日本語情報が手に入ります。

 ヘビメタ界は不滅です。これほどのマイナー・バンドを取り上げるブログやHPの数の多さに驚かされます。しかし、あまり誉めていないのがまたメタル界らしくて結構です。多くの意見は、「ハウル・イン・ザ・スカイ」と「サマーラヴ」の2曲が抜きんでているというものです。

 政治的な書き方をしてしまいました。残りはだめだと断言する意見が多いです。やはりディテールにこだわるヘビメタ界ならではの意見殺到です。私はアルバムのまとまりが意識されていて、全体として大変結構だと思うのですが。

 ボートラ収録の4曲は、がらりとかわって12インチ・シングルらしいまとまりになっています。このことからもアルバムとしてのまとまりを重視したことがよく分かります。強弱、硬軟をうまくとりまぜた幅広い曲調を上手く並べているんです。

 編成はディープ・パープルと同じで、様式美に貫かれた、教科書的なヘビー・メタル楽曲が並んでいます。ジャケットといい、サウンドといい、一歩間違うとパロディーだとされてしまいそうなほどの王道ぶりです。ヘビメタとは何かと聞かれたら、黙ってこれをならせばよいです。

 ペール・エドワードソンの泣きのギターとマグヌス・ストロンバーグのクラシカルなキーボードを軸に、ハード・ロックあり、お約束のバラードあり、サントラ的なスケッチあり、全部まとめて「北欧の光と翳を湛え」たクラシカル・へヴィ・ロックです。

 大ヒットをとばしたヨーロッパと同時期の人たちで、どうやら、バンドとしてのまとまりというよりも、スタジオにつどったミュージシャンのコレクティヴのようなものだったのではないかと想像されます。2枚目を作る予定が初めからなかったのではないでしょうか。

 バンドの5人は、その後もスウェーデンのロック・シーンやTVの音楽などで活動を続けていたようです。演奏も達者で、アルバム作りにも長けているのですが、バンド的な熱さには欠ける面白いバンドです。

Biscaya / Biscaya (1983 Grammofon)