「×3」と書いてトリプルと読みます。3枚目のアルバムですから3倍美味しいという意味合いでしょうか。そして、ジャケットには三通りの松浦亜弥が写っています。ヒップホップと女学生とアイドルです。これも×3の意味するところの一つでしょう。

 松浦亜弥の3枚目は前作からきっちり1年の間を置いて発表されました。今回もその間にでたシングル曲3曲を含みます。この頃のあややの活躍ぶりを考えると、1年でシングル3曲というのは意外と少ない気がします。

 三曲は「グッバイ夏男」、「ね~え?」、「ザ・ラスト・ナイト」ですが、これが見事に全部曲調が違います。「グッバイ夏男」は鈴木Daichi秀行の編曲になる曲で、汗が弾けるPVが似合う激しい曲調です。

 「ね~え?」はぶりぶりのお姫様アイドル曲です。ピチカート・ファイヴの小西康陽が編曲を担当し、ギターはパール兄弟の窪田晴男が弾いています。ミニモニで展開されるカワイイ系の傑作でしょう。♪お出かけいたしません、悲しくなりました♪とか、つんく♂は凄いです。

 そして「ザ・ラスト・ナイト」はまさかのバラード曲です。真剣なバラードで、こちらはハロプロではお馴染みの鈴木俊介担当で、ストリングスが光ります。シングルでのバラード曲としては「草原の人」につづくものです。

 3曲全然違うのですが、それぞれがジャケットのキャラクターに対応するわけでもありません。ただ、ヒップホップ・キャラは、あややも参加したシャッフル・ユニット、ソルト5の「ゲット・アップ・ラッパー」の松浦バージョンに対応しているようです。

 とすると他の二つは何だろうと考えてもみましたが、あまり意味がなさそうです。この頃のハロプロの仕事ぶりはジャケットに関しては疑問だらけでした。せっかくの素材なんですから、もうちょっとやりようがあったでしょう。

 ところで、この作品にはジャケットが二種類あります。こちらは通常盤で、もう一種類はあややの着物姿です。演歌パロディーのジャケットですが、それはまたどの曲にも対応していません。分かりにくい。

 このアルバムは、シングル3曲よりも、トロンボーンの村田陽一をフィーチャーしたロック調の「恋してごめんね」だとか、ジャズ・テイストの「オリジナル人生」、ブレイクビートの「涙のわけ」、正統派の「可能性の道」などアルバム曲に聴きどころが多いです。

 さらに初めてのウィスパー・ヴォイスが胸にささる「ラヴ・トレイン」がいいです。♪だんちょね♪と聞こえるところがまた可愛くて、この曲でのあややのボーカルはこれはこれでまた17歳らしくてとても素敵です。

 どの曲も聴きどころのあるアレンジが施されていて、松浦のボーカルもこれまた冒険に見事に応えて聴き応えがあります。前二作の勢いはありませんが、返って落ち着いた好作品になっています。

X3 / Matsuura Aya (2004 Zetima)