三つ子の魂百までと言いますが、少年ナイフのデビュー・アルバムに収録されている「ツイスト・バービー」や「動物小唄」、「バーニング・ファーム」などは今でも彼女たちのレパートリーの一つとしてライブで演奏されているようです。

 「バーニング・ファーム」は日本の誇る世界的なバンド、少年ナイフのデビュー・アルバムです。当時しばしば見かけた20センチと一回り小さいレコードでの発表ですから、フル・アルバムというより、ミニ・アルバムないしはEPです。

 実に32年の時を隔てて紙ジャケで再発されました。大変めでたいことです。しかも、同じ年に発表された、当時彼女たちが所属していたゼロ・レコードと同じ関西のかげろうレコードの二者によるオムニバス作品収録の3曲も収録されています。

 少年ナイフは1981年暮れに大阪で結成されました。中心となったのはギターとボーカルを担当する山野直子。妹の山野敦子がドラム、そして中谷美智枝がベースとボーカルというトリオ編成での結成です。

 当時、英国にはスリッツとレインコーツという女性バンドが衝撃を与えていましたから、日本でも早晩女性バンドがインディーズ・シーンから出てくることは予想できたことでした。実際、水玉消防団やゼルダ、サボテンなどが登場し、少年ナイフもその一つでした。

 しかし、このあっけらかんとした明るさは頭一つ抜けていました。シリアスなインディーズ界からは少し距離を置かれていましたが、我が道を行く少年ナイフは海外に活躍の場を広げていくことになります。そんなことを誰が想像したことでしょう。

 さて、本作は自主制作カセット「みんな楽しく少年ナイフ」を経て、発表されたミニ・アルバムです。何度か再発されていて、そのたびにボーナスが変わっています。途中で入っていた「うっかり八兵衛」が今回は収録されていないのが少し残念です。

 その代りに、本作収録曲を2013年と14年にライブ演奏したトラックが収録されています。山野直子以外はメンバーも変わっていますし、決して懐かしがっての演奏ではなく、同時代の楽曲に生まれ変わっています。

 アルバムは、公式サイトには「飾らない等身大ロックは全国に衝撃を与える」と書いてありますけれども、実際、彼女たちに勇気をもらった女性は数多かったことでしょう。シンプルな演奏に何でもありの歌詞は皆の目から鱗をおとしました。

 曲のテーマが何とも素敵です。「工場の一日」や「焼畑農業のうた」、「亀の子束子のテーマ」と社会との距離感覚がいいです。一方で「象のパオパオ」や「動物小唄」、「オウムのポリネシア」と動物シリーズ、さりげなくサリンジャー「バナナ・フィッシュ」と楽しみが深い。

 演奏はラモーンズ的パンクが基本ですが、「焼畑農業のうた」は「ダンス天国」ですし、シンプルながらギターのサウンドがニュー・ウェイブ的でもあり、後のナイフよりもむしろ落ち着いた感じが素敵です。85年には早くも米国で発売されるという世界標準盤なのでした。

Burning Farm / Shonen Knife (1983 Zero)