「恥も外聞もなく『ロックン・ロール万歳!』と大声で叫びたい気分の日々が続いている。カッコよ過ぎるよ、カラスたち!!」。ライナーノーツで赤尾美香さんが叫んでいらっしゃいます。気持ちのいいライナーです。私もこのアルバムは同じように思いました。

 ブラック・クロウズは1990年のデビュー作「シェイク・ユア・マネー・メイカー」が地道なツアーでじわじわと人気を得て、最終的には500万枚を売る特大ヒットになり、一躍スターに躍り出ました。その後も順調な活動を続けますが、なかなかデビュー作を超えることができません。

 4作目はミリオンを逃してしまい、リズム・ギターのマーク・フォードが脱退してしまいます。そして、心機一転「バンドの過去10年を総括するアルバム」として1999年に発表されたのが、この「バイ・ユア・サイド」です。

 メンバーの脱退は、「俺たちは何をやってるんだろう」と考え直すきっかけとなりました。そうして、「俺たちがロックン・ロール・バンドだってことを改めて理解したんだ。それが最も自然なことであり、心地好いことなんだってね」と初心に帰ることになりました。

 「バイ・ユア・サイド」は原点回帰のアルバムで、概ね好意的に受け入れられました。私もこの作品は心から楽しむことができました。しかし、チャート的には彼らのオリジナル・アルバムの中で最も報われていません。一体何故なんでしょう。

 ブラック・クロウズはクリスとリッチのロビンソン兄弟を中心にしたバンドですが、今回は、ギターのリッチがリードもリズムも一人で兼ねています。そのため、リッチは懸命に努力したということで、ギタリストとして一皮むけたものとクリスは評価しています。

 プロデューサーにはエアロスミスの紹介でケヴィン・シーリーを初めて起用しています。エアロスミスで経験を積んだ人らしく、小細工なしのメジャー路線という彼らにとって理想的なアプローチです。

 再び赤尾さんの言葉を借りると、「腰にズンズンくるリズム、ドライヴしまくるギター、うねるキーボード、厚いコーラス、激しくロールするエモーション、叫び続けるソウル・・・どこをどう切っても、豪快で痛快でセクシーな超快感ロックン・ロールが溢れ出」します。

 彼らはデビュー当時から、ローリング・ストーンズやフェイセズと比べられていました。どこか時代から超然としているというか、オールド・スクールのロックン・ロールを演っているバンドということで、各方面からの風当たりは結構きつかった。

 このアルバムもフェイセズそっくりだとか言われていましたが、時間が経つとどっちが本家だか関係なくなってきます。ブラック・クロウズのロックン・ロール魂は見事に時代を越えて生き残っていると思います。

 私の一押しは「ウェルカム・トゥ・ザ・グッドタイムズ」。ここでのダーティー・ダズン・ブラスバンドとの共演は鳥肌ものです。「ダイアモンド・リング」の渋い感じもいいですし、タイトル曲のいなせなボーカルも素敵です。良いアルバムです。

By Your Side / The Black Crowes (1999 SME)